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アクティブラーニングで考える損害賠償責任

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

玉垣正一郎先生の「民法概論」では、損害賠償責任についてアクティブラーニングで考えました。
損害賠償責任とは、故意または過失により他人の身体または財物に損害を与えた場合、民法および自賠法の規定により、その損害について原則として金銭で賠償する責任を負うことを言います。
今回は「認知症の夫が鉄道の駅構内の線路に立ち入り,通過する列車と衝突して死亡した事故」をケースに、まずは遺族(妻・長男)に監督義務違反の過失があるかどうかに焦点を当て、グループディスカッションを開始しました。

責任を負うのは誰か


認知症の方が事故を起こして被害者の方に損害を負わせてしまった場合、まず問題となるのは民法714条です。民法714条とは、「責任無能力者が賠償の責任の負えない場合、監督義務者や責任無能力者を監督する者が、代わりに責任を負う」というものです。
今回のケースでは責任無能力者(=認知症の夫)に対し、妻には監督する義務があったのでしょうか。まず、監督義務者が誰かということをそれぞれの関係性や立場から考えました。

「妻に監督責任があったと思う人?」
「妻本人も要介護認定を受けていたのだから、夫を監督することは難しいと思う。」
「でも家族で話し合って、自分たちで介護するって決めたんだよね?」
「それなら介護できる立場にある、長男に責任が生じるんじゃない?」
様々な背景から推測される意見が飛び交います。


力を発揮できる学修環境

では責任は遺族だけにあったのでしょうか。
「鉄道会社も、人が線路内に入れるような状態になっていたことは問題だよ。」
「一生懸命介護した人の責任が問われるのではなく、何もしてこなかった方が問われるのでは?」
講義内で学んだ知識を踏まえながら、他の立場の責任についても考察していきます。議論は過失相殺があるかどうかまで、発展していきました。

アクティブラーニングによる民法概論では、民法に関する専門知識を獲得することをゴールとしているわけではありません。これまでも学生達はケースを通じて、多方面から物事を深く見つめ、考える力を養ってきました。講義での発言は、入学してからアクティブラーニングによって身に付いた力がしっかりと繋がって出てきたものばかりです。単なる知識の習得にとどまらず、体系的に物事を考える力や相手に的確に伝える力を発揮するチャンスが多いのもアクティブラーニングの特徴です。