株式会社日本経営 冠講座《マーケティング入門》
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小野裕二教授の「マーケティング入門」の授業は、名古屋商科大学と株式会社日本経営との産学連携の一環として、株式会社日本経営からの寄付金を財源に、マーケティングの最前線で活躍する人材をゲストスピーカー...
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Case Method
北村貴先生による「政治学」の講義では、政党についてアクティブラーニングで学びました。もし自分が議員だったら誰を支持するかという仮定で、学生は政治的意思決定を下します。政党という集団は何を目的に作られているのか?1970年代の自民党の派閥同士の権力闘争の背景にある政治家たちの思惑とは?政治の世界のルールや慣習を理解し、三角大福中の権力闘争をアクティブラーニングを通じてビジネスのエッセンスを学びます。
1972年、内閣総理大臣と自民党総裁を務めた佐藤栄作の退任を受け、「三角大福中」と呼ばれる5人の政治家が後継の座を争うことになりました。次期総理を福田赳夫にしたい佐藤栄作と、佐藤から独立して総理の座を狙う田中角栄が熾烈な権力闘争を展開していきます。学生は田中派と佐藤派に分かれて議論を繰り広げます。
Q. あなたは佐藤派の議員ですが田中に金を積まれ田中派になるよう言われました。しかし佐藤からも福田を支持するようにと説得されています。あなたなら田中と佐藤、どちらを支持しますか?
《田中派》
・田中は資金があり、他の多数の議員にも金を積んでいて田中派が多数派になりそうだから。
・現在の佐藤総理大臣の地位を脅かすほどの勢いがあるから。
・若くて将来性のある田中派についていた方がメリットがありそうだから。
《佐藤派》
・現在の権力者の下についている方が安心だから。
・カネと権力が安定して手に入るため。
・裏切り行為をしたことでバッシングされるが怖いのと、今後も問題を金で解決されたくないから。
総裁選挙の際に立候補しなかった中曽根は田中を支持しました。この時、田中から中曽根に7億の資金が流れたと言われています。「政治は数であり、数は力、力は金だ」と言った田中の言葉からも分かるように、田中角栄の最大の強みはその豊富な資金源でした。
佐藤派と田中派の議員に共通して言えることは、どちらも権力を求めて各派閥を支持しているということです。安定の佐藤か、金に物を言わせても将来有望な田中か。学生が考えて出した意見は政治の趣旨をよく理解して述べられているものでした。
田中のカネによるスキャンダルで総辞職することとなった田中内閣。その後を継いだのが、椎名悦三郎副総裁によって指名された三木武夫でした。その後、「ロッキード事件」が発覚し、三木は事件解明によって低下しつつあった支持率の回復を狙います。しかし、田中派や福田派、大平派はこれに反発し、「三木おろし」と呼ばれる動きが発生しました。
Q.総裁選挙を実施した方がフェアなのに、なぜ総理大臣を指名で決定したのか?
・総裁選挙では福田と大平の争いが激化し、長引く可能性があったため。
・選挙で総理大臣を決定すると党内にしこりが残り、うまくまとまらない可能性があるから。
・選挙では多くのお金が動くので、国民に愛想をつかされてしまうのではないかという恐れから。
Q.あなたは田中派に所属する議員です。田中はあなたが初めて選挙に立候補して以来、一貫して面倒をみてくれました。いわゆる政界の恩人です。しかし本心ではクリーンな政治を掲げる三木に共感しています。こうした中で、あなたは「三木おろし」に参加しますか?それとも三木の汚職解明に協力しますか?
《三木派》
・田中派なのにクリーンだというイメージが得られるため。
・自民党のイメージをよくするため。
・国民からの指示を得られるから。
《田中派》
・自民党の破壊行為はクリーンではないから。
・田中の汚職が解明されると政界の中のお金の流れが悪くなるから。
・大派閥の方が支持が多いため、従っておいた方が良さそうだから。
政党は政策や政治的主張に共通点がある者が集まって形成する集団です。今回のケースの権力闘争では、どの議員をトップに置くのか意見は対立していますが、共通しているのは自民党について考えて意思決定をしているということです。政党の目的は政権を取ることであり、内部の分裂は避けたいと考えていることから、三木武夫の総裁・総理就任という意外な展開や、三木おろしという動きが発生したのです。
政治に限らずビジネスの現場でも言えることですが、何事も数に頼りすぎないことが大事だと北村先生は説きます。
複数人で何かを決めるとき、まず浮かぶのは「多数決」です。多い方が勝ちで、少ない方は否応無く負けです。ですが、現実世界はそのように数の多い少ないだけで割り切れるものではありません。田中内閣がカネにまつわるスキャンダルが明るみになり退陣した際に、福田赳夫や大平正芳ではなく弱小派閥の三木武夫を次の内閣総理大臣に指名したのも、第3の道の選択という政治的意思決定があったと言えます。
ケースは過去の出来事なので、調べればすぐに誰が最終的に内閣総理大臣になったのか答えは明確です。しかし、学生の意見ははっきりとした理由をもってどちらの派閥を支持するか二分されました。つまり、学生は外部からの受け売りの知識を答えたのではなく、自分の価値観や知識に基づいて、政治的意思決定を下したということになります。学生が、アクティブラーニングが目標とする「主体的に考える力を持った人材」として成長してきていると感じる講義でした。