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アクティブラーニングで学ぶねじれ国会

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

今回の北村貴先生による「政治学」では、2007年に生じた、ねじれ国会を題材に、議会運営における政治家の葛藤と決断についてアクティブラーニングで分析、検討しました。ねじれ国会とは衆議院と参議院の多数派が異なる国会をいいます。ねじれ国会になると議案に対する姿勢が両院で違うため、衆議院で通った議案が参議院では通らず、いつまでたっても結論が出ないという可能性が大きくなります。この時代の政治家たちがこの状況下でどのような政治的意思決定をしたのか追体験しながら考えます。(以下、敬称略)


参議院選挙、自民党の歴史的大敗


2006年9月に小泉純一郎の後継者として、安倍晋三が内閣総理大臣に就任しました。
安倍内閣発足当初はまずまずの滑り出しでしたが、郵政民営化問題における造反議員の復党問題、閣僚スキャンダルなどが原因で内閣支持率は徐々に低下していきます。さらに年金記録問題が追い打ちをかけ、社会保険庁のずさんな年金管理に国民の不満が爆発し内閣支持率は39.4%から28.8%へと10%も低下してしまいました。
一方で、野党である民主党は、次第に支持率を高めていました。代表の小沢一郎は「国民の生活が第一」というスローガンを掲げ、自民党の路線と対決する姿勢を打ち出しました。
そして、2007年の参議院選挙では自民党は歴史的大敗を喫し、参議院の第1党の座を民主党に明け渡すこととなりました。ここでねじれ国会の現象が発生しました。

Q.あなたは「参議院選挙に負けたら総理大臣を辞めるべき」という意見に賛成ですか?反対ですか?
賛成
「選挙で勝てないのは国民が支持していない結果を表している」
「野党が勢力を伸ばしているのに、自民党内の求心力がない人がトップではいけない」
「自民党内から新たな人を選べるんだから辞めても良いのではないか」
「国民の意思に反している野党から反発や審議の妨害があるかも」

反対
「今回は大きな原因が総理大臣にあるわけではないから辞める必要はない」
「辞めて逃げるのではなく、問題を解決することに真摯に取り組むほうが印象がいい」
「リーダーをコロコロ変えると国民の信頼が薄れるのでは」
「解決してから辞めるべき。次の総理をどうするかということにフォーカスしてしまい、今ある問題をうやむやにして解決しないままになるかも」
「外交で国のリーダー同士の関係をせっかく築いたのに、リセットするのはデメリットと感じる」

同年9月10日、自民党は参議院選挙で大敗しましたが安倍総理は、内閣総理大臣続投を宣言し、職責を全うすると述べました。しかし、その二日後、体調不良を理由に突然の退陣表明をしました。

21世紀の角福戦争

次の総理大臣に就任した福田康夫は、かつて総理大臣を務めた福田赳夫の息子です。親子で内閣総理大臣になったのは、日本憲政史上初のことでした。この総理大臣の指名の際も、ねじれ国会の弊害で衆議院は福田を指名、参議院は小沢を指名し、両院協議会でも結論が出なかったため「衆議院の優越」により福田が内閣総理大臣となりました。
衆議院の優越とは、普段は衆議院と参議院は対等な立場ですが、法律案の議決や内閣総理大臣の指名などいくつかの権限では例外的に、衆議院の優越が認められるというものです。この時、政権交代を実現するために、小沢は自民党への攻撃の機会を伺っていました。小沢一郎は田中角栄の直弟子であり、福田赳夫を父親に持つ福田康夫と対立する構図は、まるでかつての角福戦争を彷彿とさせるものでした。
ねじれ国会における政権運営の難しさが顕著にあらわれるなか、福田はねじれ国会の対策として「大連立」構想を小沢に持ちかけました。大連立とは、議会の第1党と第2党による連立政権を意味します。

Q.あなたは民主党の幹部です。代表の小沢一郎が自民党と民主党の大連立の案を持ち帰ってきました。あなたは小沢の提案に賛成しますか?反対しますか?
賛成
「パートナーになって最終的に乗っ取る」
「自分の政策が実現するのはいい事」
「弱点を知ったら弱みに付け込み、民主党が政権を握る」
反対
「自民党の方が立場が上なので、約束を守ってもらえるかどうか怪しく利用される心配がある」
「小沢をトップにするために頑張ってきたのだから、大連立で2番手に甘んじてはいけない」
「民主党の支持率が上がっているので、ここで妥協して自民党と組むのはもったいない」

結局、この大連立の案は民主党幹部全員から反対され、小沢は大連立に向けた協議は今後行わないという旨を福田に伝えました。この結果について小沢は、「政治的混乱を招いた責任を取る」として民主党代表の辞任を表明します。それに対し鳩山由起夫ら幹部は、小沢に留任するよう説得します。小沢は続投を決め、自民党への対決姿勢をより明確に打ち出すようになります。福田が考えたこの大連立構想は失敗に終わりました。
難しいと感じる人も多い政治の授業ですが、アクティブラーニングで当時の政治の登場人物になって主体的に考える事で、先生の話を受け身で聞くだけでは分かりにくいことも理解がしやすくなります。