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アクティブラーニングで学ぶソニーの営業権一時償却

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

佐野哲哉先生の財務会計の授業では、実在する企業の実例と財務諸表を用い、財務会計の概念をただ知識として知るだけでなく、使いこなすことができるよう、アクティブラーニングで学んでいます。

企業の会計は、目的に応じて「管理会計」と「財務会計」の2つに分かれます。そのうちのひとつ、財務会計は過去の経営の結果を示すものです。企業外部の利害関係者(株主、債権者、徴税当局など)に対して提供することを目的とします。
今回は多種類の事業を営む大企業、ソニーをケースに営業権(のれん)の償却について考えていきます。

<ケース概要>
1994年、伊庭副社長は映画事業の一時償却をすべきか悩んでいた。同時期に買収し、参入した音楽事業は順調に推移したが、映画事業は必ずしも上手くいっていない。手放すことは簡単だが、レピュテーションリスク(企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被る危険)もある。

営業権(のれん)とは?
企業間における買収や合併時に出てくる概念であり、「超過収益力」と解釈される。
同じ商品を売る企業が複数あった場合、有名企業の方が信頼できる、品質が良いといった好意的な感情を持っていると、他の企業と比較して「超過収益力がある」ということになる。
一時償却とは?
減価償却資産について、取得価額を取得年度のみで全額損金へ算入すること。通常の「減価償却」という方法では、基本的に資産が社内にある限り取得価額の一部を損金として計上し続けなければならない。

財務諸表を読み解きながら


まずは映画事業の営業権は一時償却したほうがいいかどうか、双方の意見を出し合いました。

<一時償却する派>
「純利益が減っているから追加投資ができない。これでは映画事業の再建も難しい」
「ソニーのブランド力があれば、レピュテーションリスクはさほど気にしなくてもよい。過剰に収益性を見積もっていると株主に見抜かれる前に一時償却した方がよい」

<一時償却しない派>
「営業利益と売上原価の相関性をみると、年々コストパフォーマンスが悪くなっている。一時償却するより前に、売上原価の中身を見直すべきではないか」
「社債が債務不履行になることは避けたい」

ケースに書かれている事実とソニーの財務諸表を見ながら、それぞれの意見を出し合います。
先生「では、一時償却することによって考えられるリスクは?」
学生A「株価が下落するかもしれない」
学生B「社債が債務不履行になると、他の社債も連鎖的に債務不履行となり、ソニーグループ全体に影響が及んでしまう」

財務諸表を読み解く力を持っていれば、今回のケースの場合ソニーがどのような状況に置かれていて、今後どのような道を辿るのかも見えてきます。
実在する企業の実際の事例を用いて考えたことで、関心を強く持ち、よりリアルな追体験ができます。