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アクティブラーニングで学ぶ事業再生戦略

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

弁護士で国際経営コンサルタントでもある植田 統先生による事業再生戦略では、実際に起きた企業の経営危機を取り上げどのように見直し、収益力のある事業へと再構築していったのかひとつひとつの問題点を掘り下げます。事業再生の戦略術をアクティブラーニングで学びました。
この授業では、実際に現場で何がおきているのかを分析する能力や戦略的な思考だけではなく多くの関係者を調整していく人間力など様々な能力を養成します。経営者としての大切な行動と考え方について学びます。

使用ケース

・日産自動車
・アサヒビール
・GEの過去の20年の体質転換
・IBMの企業再建



アサヒビールの二人の社長による企業改革


都心型コースでは、夏休み中に集中講義が4日間行われました。
今回の集中講義2日目に学んだケースは、飲料メーカーのアサヒビールの事業再生についてです。
1970年代末からアサヒの経営は悪循環に陥っていました。会社も商品も二流とみなされ売れ行きは伸び悩んでいました。1982年に村井勉氏が社長に就任し、さらに1986年の春には村井氏に変わって樋口廣太郎氏が新しく就任しました。
二人の改革は全く異なる方法での事業再生でした。
村井氏は社長として、まず管理職に経営理念の明文化を命じ各部門の部長を集めて会社の総合的な経営目標を討論させました。会社を理解するために偏見を持たず自分の肌で組織にふれることと管理職たちとのコミュニケーションを図り信頼関係の構築を目指しました。その結果、会社の雰囲気はよりオープンになり活気をおびたが、実績には結びつきませんでした。
一方、樋口氏は利益確保は社長の責任だと発し、どのアイデアを採用するかを決めました。そして、皆の努力を利益の出るかたちにまとめあげていくと掲げました。自らもアイデアを出し具体的で明確な指示によりアサヒの意思疎通は速くなります。また、ビールの品質向上を目指し生産設備には投資するよう命じ、これまでのコスト意識を転換させるために指示をしました。
そして現在でも人気のアサヒスーパードライが1987年に誕生しアサヒスーパードライは消費者から好評を得て1987年の売上は33%伸び、1988年までに生産能力を50%アップを目指しました。

学生が経営者としての疑似体験

授業ではこの「アサヒビールの事業再生戦略」の事例を取り上げ分析を行いました。
アサヒビールの改革の中で村井社長と樋口社長の二人の中で、どちらがより企業改革への貢献が高いかについてグループディスカッションで話し合われた後、クラス全体で討議されました。

●村井社長が貢献度が高かったという学生からは、
「経営理念を考えた社員が同じ方向性を持って取り組むことは大切だと思う」
「信頼関係ができたことで自発的に行動する社員が増えた。それによって新しい商品が誕生したのだと思う」
「会社のことを考え、村井社長の時代には結果は伸びなかったが社員の教育や組織改革ができた」
●樋口社長が貢献度が高かったという学生からは、
「行動志向型の樋口社長になったことで具体的な指示で明確な数値を目指したことで売上が伸びた」
「これまでのコスト意識を転換させ、生産設備が整い、新しい商品を誕生させることができた」
「実際に利益を伸ばし、新しい商品を誕生させ会社への貢献力は高かった」

大半のグループは村井社長の貢献度が高かったという結果でしたが、学生たちは二人の社長の企業改革を比較しながら発表している姿が印象的でした。

最後に植田先生から企業の経営状況には時代背景が深く関わっていると伝えられました。
樋口社長が売上を伸ばした1987年の日本はバブル景気です。そういった日本経済の状況が影響することも考えなくてはなりません。経営者は目先の利益だけを見るのではなく、長期的な視野をもち企業理念を体現することの二軸のバランスが必要です。本当の利益とは何なのか、学生たちが自問自答している様子が見受けられる授業でした。