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アクティブラーニングで学ぶ社会学

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

矢部 謙太郎先生による社会学では、自分の考えを論理的にわかりやすく説明する技術を習得することを目指します。「読む」「書く」「話す」三つの能力を総合的に養っていきます。社会学とは社会を見る上での一つの考え方です。さまざまな社会のできごとを客観的な証拠をもとに人間と社会との関係を分析しながらアクティブラーニングで学んでいきます。

学生たちは夏休みが終わりTerm3が始まりました。2週目の今回の授業は、「九州大学の女性枠入試の導入」という事例について取り上げられました。


使用ケース


  • かげぐちの疑念
  • 九州大学の「女性枠」入試
  • マナーをめぐる不安
  • マネージャーからの要求
  • ファッションの煩わしさ
  • 購入される「健康」
  • 恋人の不可解な言動

九州大学の「女性枠」入試の導入について


2010年春に九州大学が2012年度の入試から一般入試の募集人員に「女性枠」を設けると発表しました。
女性枠を設ける理由は、九州大学の女性教員の割合の低さが挙げられています。09年のデータでは学内全体の女性教員の割合が8.7%、数学科の教員が所属する数理学研究院の教員はわずか3%しかいません。この状況を打開するために、女子の入学者を増やす対策が考えられました。数学科の中で女子の入学者が最も少ない一般入試後期の日程に女性枠を設け志願者の増加を図りました。
優秀な女子学生を確保しグローバル社会で活躍できる人材養成を目指し、また語学力をみるために現在の一般入試後期日程で課している「数学」のほかに「外国語(英語)」を加えることになりました。
「女性枠」導入の趣旨として日本における数学分野の女性研究者が少ない現状の中、女性ならではの視点と感性により教育・研究に多様性をもたらす女性研究者の在籍率を上げることを目指しました。

九州大学が発表した結果、「男性差別ではないか?」などという批判が多数寄せられました。これを受け、大学は2011年5月19日に導入の取りやめが決定されました。


「女性枠」導入について学生たちの意見は?


「女性枠」入試に賛成するか、それとも反対するのかを授業冒頭のグループディスカッションで意見交換が行われ全体討議へと進んでいきました。

●賛成派の学生たちは
・大学が目標とする数学分野でグルーバルに活躍できる女性を育成したいと掲げているので、女性枠を作り集めるやり方はとても効率的だと思う。
・研究者は男性のイメージが強いから、女性枠を作ることで興味を持つ女性が増え宣伝になる。
・男性の多い数学分野なので男子学生のモチベーションアップになるのでは?
・何も告知をせず大学内だけで行われるよりは、あらかじめ告知をして女性を増やそうとしているので良いと思う。
●反対派の学生たちは
・能力で判断されるべきで、性別で分けられるのは差別だと思う。
・設けた女性枠の人数に対して受験する人数は果たして超えるのか?超えなければ枠を作る必要はないと思う。
・グローバルに活躍する女子生徒を育成したいと掲げているが、教育方法や環境は整っているのか。
・やはり理数系は、男性の力が大きいと思う。

全体討議では賛成派がとても多い結果でしたが実際にはこの導入は取りやめとなりました。女性が研究者として活躍できるステージを作ろうとする新たな試みは、社会的関心は大きかったようです。
学生の能力を評価するものとして入試がありますが、社会では人々の能力を評価する基準が二種類あることも授業の中で学びました。自分が努力し頑張って能力や名誉を手にいれる業績主義と、人種や性別・年齢など自分の努力で変えられないもので評価される属性主義です。
矢部先生から、現代では多様な社会問題がありそのなかで生きる人々は何を求められているか、またどのような能力が必要とされているかを学び知っていく必要があると述べられました。問題を分析して人間と社会がどのように互いに影響し合うかを学ぶ授業になりました。
学生たちは今後、就職活動を始めていく際に自分には何ができるのかと考えていくようになります。
自分自身の価値をさまざまな視点から学び、社会から求められる人間力を高めていくでしょう。