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商学部:アップル社の税務戦略《山田教授》

本学商学部の教員、山田有人先生の論文「アップル社の税務戦略について」をご紹介します。山田先生は、大手会計事務所で企業を外部から約15年間コンサルティングされてきました。日本公認会計士協会国際委員や経済産業省の各種委員会委員を歴任され、また企業のCFOとして香港と日本で二つの会社を上場させた経験もお持ちです。現在、吉本興業株式会社監査役もされています。

欧米では、最大の利益を確保するために、低税率国に所得を移動させて本国における税負担を軽減させるという、多国籍企業の「節税」に対する批判が急速に高まっています。本論文はアップル社の税務戦略について、米国議会上院報告書を参考に、アップル社が具体的にどのようなスキームに基づき、移転価格税制及びタックス・ヘイブン対策税制といった、米国税制による網の目をくぐり抜けているかを検討し、日本企業にとって参考にすべき事項を抽出しています。

  


アップル社の税務戦略について
山田 有人

Ⅰ はじめに
 欧米では、多国籍企業の「節税」に対する批判が急速に高まっており、各国政府においても、財政上の重要な問題となっている。
 例えば、グーグル社は、アイルランド経由で数十億円ユーロを節税し、アマゾン社は、ルクセンブルクなどに利益を移転している、と報じられている。また、スターバックス社は、累計30億ポンド(約4700億円)の売上高を計上したにもかかわらず、低税率国であるスイスやオランダに利益を移転し、英国での法人税の支払いが860万ポンドしかなかったと批判されている。
 これらの多国籍企業に対する批判の多くは、企業が最大の利益を確保するために、低税率国に所得を移動させて、本国における税負担を軽減させる国際的組織再編の仕組みにある。
 2012年6月のOECD租税委員会本会合においても、米国から「税源浸食と利益移転」が法人税収を著しく喪失させている点を憂慮しているとの問題提起がなされ、OECDにおいてワーキング・パーティとは別に、「BEPS5プロジェクト」として開始され、2013年2月には、「BEPS報告書」が、同年7月には「BEPS行動計画」が公表され、非常に早い展開の取組みとなっている。現在「BEPS行動計画」の15のアクションプランに基づいて、OECDを中心に関係諸国においては、2014年及び2015年を目途に、具体的な検討が進められている。
 さらに、米国議会上院は、その報告書において、アップル社が2009~2012年で740億ドル(約7兆6000億円)の海外利益を低税率国のアイルランドに集め、「税金逃れ」をしていると指摘した。それに対して、アップル社の最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏は、米国上院公聴会 で、「(タックス・ヘイブンの)ケイマン諸島などは使っていません。支払うべき税金は全て支払っている」と、米国での売上については米国で税金を支払っていることを強調した。しかし、下記の表のように、米国の法定実効税率40.75%に対して、アップル社の実際の実効税率は、法定実効税率よりもかなり低く推移しているのが現状である。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.59 No.2をご覧ください。