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太宰北斗先生「競馬とプロスペクト理論:微小確率の過大評価の実証分析」で最優秀論文賞を受賞

受賞タイトル:第3回アサヒビール最優秀論文賞


商学部 太宰北斗 先生

受賞論文「競馬とプロスペクト理論:微小確率の過大評価の実証分析」

年末ジャンボ宝くじを買って、1等に当選する確率はどのくらいでしょうか?
2010年の実績から見ると、当選確率は0.00001%に過ぎません。では、飛行機に乗って墜落事故に遭遇する確率と、どちらの方が高いのでしょうか? 
実は、人間は極めて低い確率で起こる出来事について適切に評価したり、比較したりするのが苦手な傾向にあります。0.00001%と言われてもピンと来ないので、0.0001%で起こる出来事との確率的な違いにもピンと来ず、結果、実際の確率よりも高い確率があるかのように思い込んでしまうのです。
論文では、競馬の1,000万件程度の馬券売上データを分析し、実際には当たるはずのない馬券を、多くの人が当たると期待して買い過ぎていることが示されました。研究面では、競馬市場が持つデータの特性などが評価され、行動経済学会より表彰を受けることができました。


研究の成果


微小確率を過大評価する傾向自体は以前から知られていたのですが、ポイントは、実際にお金を賭けた真剣な状況でも観測されるのか、ということにありました。行動経済学では、よく実験という手法が使われます。人がどのような行動を取るか、実験室で観察するのです。しかし、ネズミは人に見られているからといって行動を変えないでしょうが、人間の場合はどうでしょうか?また、現実世界を実験室で再現することにも限界があります。
競馬場では、みんなが真剣に考えて行動していますから、こうした問題はありません。したがって、ついつい過大評価してしまうという傾向は、根強いものだと言えるわけです。
今後も研究を進めていくことで、人がどのような状況で過大評価の傾向を強めてしまうのかなどが分かってくるものと期待しています。


身近な問題への影響


さて、この傾向はギャンブル好きな人たちだけの特徴なのでしょうか? 宝くじで考えてみると、普段コツコツと貯金する人でも、もしかすると3億円当たるのではと期待して、つい購入してしまうことが珍しくありません。しかし、実際に当たる確率はごく小さいわけですから、結果的に損をすることになります。
宝くじに限らず、生命保険の加入など、人生には多くの確率的な出来事が付き物で、その度に判断を求められます。人生で損を重ねないためにも、こうした傾向について自分自身がしっかりと認識しておくことが必要と言えるでしょう。


実際の講義への応用


経済学やファイナンスというと、多くの学生は苦手意識を持っています。数式やグラフが多く出てくるうえに、株式投資や企業経営などをしたことがなく、一般的な教科書で触れられるトピックに関心を持てないからです。
講義では、今回の研究のように、競馬や宝くじ、スポーツなど身近なトピックを交えたり、行動経済学で使われる実験を利用した株式投資ゲームを行ったりして、多くの学生が関心を持って取り組めるように心がけています。