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国際学部:中国におけるグローバル・ガバナンス論《兪准教授》

コミュニケーション学部:中国におけるグローバル・ガバナンス論《兪准教授》

本学国際学部の教員、兪敏浩先生の論文「中国における全球治理論に対する一考察―シンクタンクの議論を中心に」をご紹介します。兪先生は北京大学アジアアフリカ研究所修士課程を修了後、慶應義塾大学で博士号を取得されました。人間文化研究機構地域研究推進センターや慶應義塾大学東アジア研究所現代中国研究センターの研究員を経て、現在本学で教鞭をとっておられます。

2012年から中国政府の対外姿勢は大きく変化しました。明確に大国外交を宣言し、実際の行動も見せています。それに伴い、中国国内では今後の中国外交のあるべき姿に対するホットな論争が展開されつつあります。本論文では、全球治理(グローバル・ガバナンス)の視点から外交戦略を論じたシンクタンクの議論にのみ焦点を当て、最近中国国内で行われている外交戦略をめぐる議論の一端を明らかにしています。そして最後に政策決定におけるシンクタンクの影響力についても予備的な考察を行っています。

  


中国における全球治理論に対する一考察
―シンクタンクの議論を中心に
兪 敏浩

一、はじめに
 21世紀に入って台頭著しい中国がその新たに獲得したパワーをどのような形で行使するかに対する関心が高まっている。
 2005年から2007年までの中国政府の言説と学界の議論を丹念に分析した増田雅之の研究によれば、国際社会における高まる中国責任論に対して中国は発展途上国としての慎重な自己認識を有しており、また「和平演変」への潜在的警戒感もなお強かったために、中国の国際責任を西側の要求に対するものではなく、発展途上国との関係強化、周辺諸国との関係強化として定義し、西側主導の国際秩序に対するソフトバランシングを通じて中国の国際地位を高めることを目指していた。すなわち台頭する中国の自信ではなく、慎重な内外環境に対する認識が基礎にあったという。
 2008年世界金融危機をきっかけに中国国内では「光養晦、有所作為」(能力を隠して力を蓄え、できることはなしとげる)路線を維持すべきか見直すべきかをめぐる議論が一段と盛んになり、中国政府は2009年に玉虫色の「堅持光養晦、積極有所作為」(引き続き低姿勢で力を蓄えながらできることは積極的になしとげる)の方針を発表した。2010年の中国政府関係者の議論を中心に考察した浅野亮の研究によれば、「有所作為」に関する論評が増えているものの、中国政府が「光養晦」を見直したとは言えないし、国益の拡大と軍事力の強化を目指して現在の「戦略的チャンス」の時期に外国のことを気にすることなく打って出ていくのではなく、できることを積極的にしようというのが政策決定層のおおむねのコンセンサスだと指摘した。他方、この時期、にわかに注目を浴びた「核心的利益」論に対する高木誠一郎の論考でも、2010年末以降「核心利益」概念の明確化による限定と柔軟路線への回帰が平行して進むことになったという。
 以上の先行研究が指摘するように、中国政府は国益の拡大、国際的地位の向上、軍事力の強化など基本的目標を追求する際に、2010年までおおむね慎重な対外姿勢を維持していたといえよう。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.60 No.1をご覧ください。