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BSc in Economics

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経済学部:相続税を適正に申告するために《鎌倉教授》

経済学部:相続税を適正に申告するために《鎌倉教授》

本学経済学部の教員、鎌倉友一先生の論文「重加算税の賦課要件と租税逋脱罪の構成要件―神戸地裁平成26年1月17日判決を題材にして―」をご紹介します。鎌倉先生は信州大学をご卒業後、銀行勤務を経て会計事務所に入社され、税理士補助業務を経験後に独立されました。事務所経営の傍ら、名古屋大学大学院法学研究科博士前期課程に進学され、2006年に同博士後期課程を退学されています。

平成25年度税制改正により、相続税法が一部改正されました。基礎控除額の引き下げにより、今までなら相続税を納める必要がなかった者が納めることになります。本論文は、被告人である納税者が相続税の申告に際し、名義預金等の申告漏れを指摘され、相続税法68条の「偽りその他不正の行為」に当たるとして刑事告訴された事件を扱っています。重加算税の賦課要件と租税逋脱罪の構成要件とを考察し、納税者の適正申告に基づいた合法的な節税を図ることによる財産権確保の観点から、行政罰と刑事罰との異同の検証がなされています。


重加算税の賦課要件と租税逋脱罪の構成要件
―神戸地裁平成26年1月17日判決を題材にして―
鎌倉 友一

 平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後の相続に係る基礎控除額が引き下げられるとともに、最高税率が55%に引き上げられるなど相続税法が一部改正された。これによる増税見込額は2,420億円と試算されている。基礎控除額の引き下げにより、今までなら相続税を納める必要がなかった者が納めることになる。デフレ経済下、所得増が期待できないにもかかわらず、増税による相続財産の減少を余儀なくされることになれば、相続税に対する国民の意識は今まで以上に先鋭にならざるを得ないであろう。
 かかる税制環境のもと、本稿で扱う事件は、被告人である納税者が相続税の申告に際し、名義預金等の申告漏れを指摘され、相続税法68条の「偽りその他不正の行為」に当たるとして刑事告訴された事件である。本稿では、重加算税の賦課要件と租税逋脱罪の構成要件とを考察し、納税者の適正申告に基づいた合法的な節税を図ることによる財産権確保の観点から、行政罰と刑事罰との異同の検証を目的とする。

1.事実の概要
 被告人は、平成20年9月11日に夫であるA(以下「A」という。)が死亡し、その後の遺産分割協議の結果A の財産の全部を単独で取得したものであるが、その相続財産に関し、相続税を免れようと企て、実際の相続税課税価格が10億6360万5000円、相続税額が2億2976万500円であったにもかかわらず、相続財産から預貯金,株式等を除外する方法により相続税課税価格を減少させ、平成21年7月7日a 税務署長に対し、被告人分の相続税課税価格が7億3180万5000円,相続税額が8886万500円である旨の殊更過小な金額を記載した内容虚偽の相続税申告書を提出し、正規の相続税額との差額1億4090万円の税を免れたところ、刑事訴追を受けたため、被告人が無罪を主張した事件である。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.60 No.1をご覧ください。