学部学科

Academic Programs

経済学部

BSc in Economics

  1. TOP
  2. 学部学科
  3. 経済学部
  4. お知らせ
  5. 経済学部:なぜVaRがリスク指標の主役にいるのか《山分准教授》

経済学部:なぜVaRがリスク指標の主役にいるのか《山分准教授》

経済学部:なぜVaRがリスク指標の主役にいるのか《山分准教授》

本学経済学部の教員、山分俊幸先生の論文「線型Quantile Regressionを用いた期待ショートフォールの推定」をご紹介します。山分先生は京都大学経済学部経営学科を卒業され、京都大学経済学研究科ビジネス科学専攻博士後期課程を単位取得退学された後、京都大学より博士号を取得されています。主に金融工学や証券投資について研究されています。

2007年2月初めにサブプライム問題が顕在化した後、世界中で株価の暴落とその反動の急騰が繰り返されました。このような市場の混乱は、改めてリスクの恐ろしさを我々に知らしめ、リスク管理の重要性を再認識させました。現在、市場リスク管理にはValue-at-Risk(VaR)が幅広く用いられていますが、VaRはリスク指標として不十分であり、それに代わるリスク計測手法として提唱されたのが期待ショートフォールです。 本論文では、期待ショートフォールがVaRより優れたリスク指標であるにもかかわらず、未だにVaRがリスク指標の主役にいるのはなぜかが考察されています。


線型Quantile Regressionを用いた期待ショートフォールの推定
山分 俊幸
 はじめに
 2007年2月初めにサブプライム問題が顕在化した後、打撃を受けた投資銀行やヘッジファンドが株を手放すことで、世界中で株価の暴落とその反動の急騰が繰り返された。日本においては、急激な円高の影響も加わり、特にリーマンショック後に株価が乱高下を繰り返した。株価が乱高下する状態とは、株価リターンのボラティリティが高まっている状態である。図1.1は、2004年8月26日から2010年8月26日までのTOPIXリターンの20日ヒストリカルボラティリティーの推移を表している。図1.1 によると、2007年2月以前は1%未満を示すことが多かったTOPIXリターンの20日ヒストリカルボラティリティーが、2007年2月以降は多くの場合で1%以上を示していることがわかる。また、2008年9月のリーマンショック直後に、TOPIXリターンの20日ヒストリカルボラティリティーが急上昇していることがわかる。よって、サブプライム問題が日本の株価変動に与えた影響は、リーマンショック直後に如実に現れているといえる。
 上記したような、サブプライム問題顕在化後の市場の混乱は、改めてリスクの恐ろしさを我々に知らしめ、リスク管理の重要性を再認識させた。例えば、室町(2008)では、サブプライム問題に端を発した金融危機で分かったことは、金融機関のリスク管理もまだ発展途上であったという事実であり、今後同じような金融危機を引き起こさないためには、金融リスクの計測・管理技術のさらなる発展が必要不可欠であると主張している。また、日本銀行金融機構局(2011)でも、室町(2008)と同様の主張がなされている。
 現在、市場リスク管理にはValue-at-Risk(VaR)が幅広く用いられている。VaRは、ある一定の確率範囲内で起こりうるポートフォリオの最大損失額として表され、この確率が99%のVaRを99% VaR、95%のVaRを95% VaRと呼ぶ。VaRは、JP モルガンのCEOであったD.Weatherstronが自社のポートフォリオ全体がさらされている市場リスクの大きさを一括して知りたいと考えたことから開発されたリスク指標である。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.56 No.2をご覧ください。