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アクティブラーニングで学ぶ、今と将来起こりうる問題の提起と解決

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

井坂 智博先生の「デザイン思考とイノベーション」では1年次に履修した授業「デザイン思考」をベースに、直感を頼りに問題を定義して意思決定する力をアクティブラーニングで体得していきます。

過去のビシネスの様々な事例や経験から問題の解決策までをAIが担当するようになり、ビジネスパーソンのキャリアアップの矛先は問題を定義する力に変化しています。
いまは、経営環境の劇的な変化により、新規事業開発、商品開発、R&D(※)の現場からは、これまでのマーケティング手法や市場分析からでは持続的な製品や事業につながりにくいと企業から井坂先生に相談が増えています。

この授業では、問題定義から解決に向けたソリューション作成までの反復的な方法論であるデザイン思考の実践を行います。また、将来に起こるであろう社会の課題を予測し、目標となるような状態・状況を想定したうえで、そこから現在に立ち戻って”やるべきこと”を考えだす持続的な事業開発を理解します。

※R&Dとは
Research and Developmentの略で、研究開発をして企業の競争力を高めるために必要な技術調査や技術開発を目的とした活動、もしくはその活動を行うための組織のこと。

人気ファッションブランドZARAから学ぶ


今回はトレンドの洋服が手頃な価格で手に入ることで人気があるファッションブランドZARAのケースから学びました。
はじめにケースからZARAの問題定義と解決策を読み解きました。事業を推進する上で、問題定義力とお客様に提供する価値(ユーザー価値)について理解を深めていきました。ZARAの店舗展開時にどんな問題を定義し解決しようとしたのかをグループディスカッションを通して議論し理解を広げました。また、ZARAは、ライバル企業のユニクロやFOEVER21などと比較して、どのような価値をユーザーに提供したのかを議論し、問題定義と提供価値の関係性を明確にしました。

そして課題として実際の店舗へ行き、フィールドワークでお客様が見過ごしている「問題点」を見つけ、デザイン思考で解決策を考えてきました。実店舗のハード・ソフト・情報発信の3つの視点から問題点を絞り込みます。解決に向けたアイディアを創造し、ZARAのお客様にどんな新しい価値を提供したいかを、「マーケティング・企画・技術開発・仕入れ・製造・流通・・」などのバリューチェーン(※)に置き換えて課題を整理し考察しました。

ZARAの事業戦略として、2週間に1回のスパンで商品を入れ替えるという、他のアパレルブランドと比べると早いサイクルの特徴があります。これについて先生から「非常に早いペースで新しい商品を送り込むことで在庫が余るのでは?」という質問がありました。

ZARAの価値を理解した生徒たちからは、

「在庫を持ってるからこそ早いペースで商品を入れ替えられる」
「ユーザーは商品が変わることに魅力を感じているので、新しいものを見に集まることで好循環が生まれている」
「ZARAの商品は入れ替わりのサイクルが早いため、他のお客さんと被らないという価値がある」

それぞれが考え出した問題定義と解決策が現在の店舗にどのように反映されているのか。また現在のZARAの問題点と2030年の問題点は何かを掘り下げけることで、持続的な事業戦略にデザイン思考がどのように実現できるのかも理解しました。

自社の強みや技術力を包含した製品やサービスと、ユーザーに提供する価値とは必ずしも一致しません。自社の技術や経営資源といった強みをベースに、商品や事業を考えるのではなく、ユーザー視点からの商品開発が必要となっていくことを授業を通して学修したようです。

※バリューチェーンとは
企業活動における業務の流れを機能単位に分割してとらえ、業務の効率化や競争力強化を目指す経営手法。分割した業務機能を精査することで、どの業務に注力し、どこを外注するかといった経営判断がしやすく競争優位性を高める。
価値連鎖と邦訳される。ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーターMichael E. Porter(1947― )が著書『競争優位の戦略』(1985年刊)のなかで用いた。

担当教員のプロフィール

井坂智博 (株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ 代表取締役社長)
学  位 : 2009年名古屋商科大学院GMP修了 M.B.A (経営学修士)
研究分野 : イノベーション
職 歴 :リクルートで人材育成や組織の活性化、営業業務の標準化コンサルを経験し、1997年日本ではじめてのWEBマーケティング会社を起業。M&Aで売却後、国連東京支部の支部長や上場起業の役員を歴任。2012年から現職。リードユーザ(障がい者や高齢者など生活に不便を感じている極端ユーザ)をインクルードした事業インクルーシブデザイン・ソリューションズを起業。新規事業開発、商品開発、人材育成などの企業コンサルをデザイン思考×インクルーシブデザインというメソッドで提供している。トヨタ自動車グループ、日東電工、三菱総研、野村総研、花王、JR東日本、キヤノン、JCB、日立、東京海上日動火災保険、NEC、セブン銀行、外資系企業などコンサルティング実績多数。

※名古屋商科大学大学院 「デザイン思考とイノベーション」講師
※日経BP課長塾「エンジニア版課長塾 視野を広げる「デザイン思考」
 「若手パワーアップ合宿 イノベーションを起こす技術」講師
※事業構想大学院 「地域創生×インクルシーブデザイン」講師
※日経ビジネスオンラインで「THE革新 イノベーションを産みだす観察」でデザイン思考を中心とする内容を連載
※ものつくり日本会議、ネイチャーテクノロジー研究会、日本ダイバーシティ推進協会インクルーシブデザイン研究会代表、千代田区・中央区みんなのユニバーサルデザイン代表幹事、他、ワークショップや講演活動で全国の地方自治体へ活動を拡大中
※著書「法人営業バイブル」PHP社 共著