学部学科

Academic Programs

商学部

BSc in Commerce

  1. TOP
  2. 学部学科
  3. 商学部
  4. お知らせ
  5. 商学部:最も裁量介入の余地が大きい会計方針《野坂准教授》

商学部:最も裁量介入の余地が大きい会計方針《野坂准教授》

商学部:最も裁量介入の余地が大きい会計方針《野坂准教授》

本学商学部の教員、野坂和夫先生の論文「退職給付会計における会計基準変更時差異の償却に関する会計方針選択行動」をご紹介します。野坂先生は公認会計士、米国公認会計士(ニューヨーク州)、税理士の資格をお持ちで、公認会計士・税理士事務所の代表として、中小企業に対するほぼ全分野の税務業務に携わっておられます。またNPO法人監査や地方公共団体の包括外部監査などにも従事されています。

会計基準変更時差異の償却年数の選択は、次期以降にまでその影響が及ぶ非常に重要な会計方針です。本論文では、会計基準変更時差異の償却に関する会計方針選択行動を裁量的選択行動として位置付けた上で、まず特定する分析対象企業が選択した償却年数の実態が示されています。また横並び選択行動の可能性、会計理論の遵守行動の可能性が説明され、さらに日本企業による会計基準変更時差異の償却年数の選択行動について、報告利益の管理行動および貸借対照表アプローチの視点から分析されています。

  


退職給付会計における会計基準変更時差異の償却に関する会計方針選択行動
野坂 和夫

第1章 会計基準変更時差異の償却に関する会計方針選択行動に対する問題意識
 日本で最初に導入された退職給付会計基準の最終改正である日本公認会計士協会(2005a)によると、会計基準変更時差異の償却年数は、上限が15年という一定の条件が付されているだけであり、その条件内であれば経営者が自由裁量のもと決定できる。また、割引率および期待運用収益率などとは異なり、会計基準がその償却年数の選択に対して、一定の指針を規定している会計方針でもない。すなわち、会計基準変更時差異の償却年数の選択は、最も裁量の介入の余地が大きい会計方針ということができる。
 また、5年以内の償却年数を選択した場合には、会計基準変更時差異の償却額は、特別損益として計上される。一方、5年超の償却年数を選択した場合には、他の退職給付費用と同様に、営業損益として計上される(日本公認会計士協会2000)。このため、償却年数の選択によって、報告利益の細区分の管理が可能となる。
 そして、企業年金基金での資産運用状況が非常に悪い時期に退職給付会計基準が導入されたため、ほとんどの企業では損失となる会計基準変更時差異が発生し、かつ、その金額は非常に多額にのぼっていた。このため、会計基準変更時差異の償却年数の選択は、非常に重要な会計方針である。そして、公認会計士協会(2002)(1)によって、正当な理由のない限り償却年数の変更が認められていないため、適用初年度における会計基準変更時差異の償却年数の選択は、次期以降にまでその影響の及ぶ非常に重要な会計方針である。
 以上から、本論文では、会計基準変更時差異の償却に関する会計方針選択行動を裁量的選択行動として位置付けた上で、まず、第3章で特定する分析対象企業(サンプル企業)が選択した償却年数の実態を示す。次に、日本企業の償却年数の選択行動の実態を踏まえて、過去の実証的研究と実務事例、および、経験的考察に基づき、横並び選択行動の可能性を説明する。最後に、会計理論のレビューおよび経験的考察に基づき、会計理論の遵守行動の可能性を説明する。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.60 No.1をご覧ください。