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経営学部:U理論と関係コンディショニングワーク《矢部准教授》

経営学部:U理論と関係コンディショニングワーク《矢部准教授》

本学経営学部の教員、矢部謙太郎先生の論文「U理論に基づいた関係コンディショニングワーク―ある父子の関係変化を事例に―」をご紹介します。矢部先生は慶應義塾大学文学部人間関係学科を卒業された後、早稲田大学大学院文学研究科博士課程で単位を取得されました。社会学(消費社会論、コミュニケーション論)を専門に研究されています。

経営学関連のキーワードで分類されがちなU理論は、社会学の主要テーマのひとつである「他者との関係」に焦点を合わせています。またU理論に基づいて考案された「関係コンディショニングワーク」(RCW)は、まさしく「他者との関係」に変化を引き起こすためのワークです。先生は、U理論に基づいたこのRCWを実践することで「他者との関係」の変化を如実に実感されました。本論文では、先生がおこなわれた関係コンディショニングコーチングのひとつの事例を軸に、RCWによってどのような関係変化がもたらされるのか、そしてそれがU理論とどのように対応しているのかを整理しておられます。

  

U 理論に基づいた関係コンディショニングワーク
―ある父子の関係変化を事例に―
矢部謙太郎
1.関係コンディショニングワーク(RCW)がもたらす変化とは何か
 「U 理論」という名前を聞いたことはあるだろうか。その考案者であるマサチューセッツ工科大学上級講師C・オットー・シャーマーの大著『U 理論―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』は、通常、大型書店において「経営学」や「ビジネス」の棚の「イノベーション」や「組織」「リーダーシップ」といったコーナーに分類されることが多い。また、大部で難解な同書を初学者向けにわかりやすく豊富な事例とともに解説している中土井僚著『人と組織の問題を劇的に解決するU 理論入門』も、またU 理論関連の諸々の記事や論文も、やはり同じようなカテゴリーに分類される傾向がある。
 このように経営学関連のキーワードで分類されがちなU 理論に、社会学を専門分野とする筆者がなぜ注目するのか。理由は以下の三点である。
第一に、U 理論が社会学の主要テーマのひとつである「他者との関係」に焦点を合わせているからである。もっとも、U 理論は、「他者との関係」とは別個の「個人」の意識の問題(たとえば、芸術家がどのような意識において創造をおこなうのかといったような、他者が介在しない問題)をも扱ってはいる。しかしながら、U 理論が主に注目しているのは、やはり「他者との関係」のなかで生まれる変化、創造であり、あくまでそれらと結びついた「個人」の意識変化の問題であると思われる。
 第二に、U 理論に基づいて考案された「関係コンディショニングワーク」(以下、RCW と略)が、まさしく「他者との関係」に変化を引き起こすためのワークであるからである。RCW とは、『U 理論』の翻訳者のひとりで、前述のU 理論入門書の著者でもある中土井によって考案され、その名のとおり、「他者との関係」を調整し良好にする(コンディショニング)という意味での関係変化を目的としたワークである。
 第三に、筆者自身が、U 理論に基づいたこのRCW を実践することで「他者との関係」の変化を如実に実感したからである。RCW の「実践」には、自分自身の人間関係(自分と他者との関係)についてだけでなく、他者の人間関係(他者a からみた他者b との関係)についてのワークも含まれている。後者は特に「関係コンディショニングコーチング」と呼ばれ、これは、他者b との関係改善を望む他者a に対して、円滑にワークがおこなえるようコーチとして支援するという意味である。
 以上三点が、U 理論に筆者が注目する理由である。さて、本稿の目的は何か。筆者がおこなった関係コンディショニングコーチングのひとつの事例を詳細に見ていくことで、RCW によってどのような関係変化がもたらされるのか、そして、それがRCW の基礎にあるU 理論とどのように対応しているのかを、筆者なりに整理して提示すること。これが本稿の目的である。

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.59 No.1をご覧ください。