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アクティブラーニングで学ぶリーダーシップの取り方

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

今日の椿田貴史先生による「ビジネス心理学」では、1996年に起こった、エヴェレスト大量遭難をケースに、集団における人間の心理から有効なリーダーシップの取り方についてアクティブラーニングで考察しました。多くの登山家にとって憧れであった世界最高峰の山エヴェレストで起きたこの悲劇は防ぐことができたのでしょうか。学生は、エヴェレスト登頂を目指す登山隊の隊長の立場になり、アクティブラーニングを通じて学生一人ひとりの見解・立場を明確にしました。


遭難を防げなかったリーダー


ケースでは、二つの登山隊が登頂を目指し、頂上、下山というルートで進んでいきます。登山隊は、登山初心者ばかりの参加者、相次ぐ体調不良者の続出、物資の輸送の問題、仲間の中で広がる不信感など、数多くの障害を乗り越えて登頂を目指さなくてはなりませんでした。最終的には、両登山隊37名のうち、5名が命を落としました。生死に関わる登山中の様々な場面で、「自分がリーダーだったら」という仮定でアクティブラーニングを通じ意思決定を下しました。

Q1.高性能の無線機がある時代に、旧式の無線機をガイドにしか持たせず顧客には持たせなかったリーダー。自分がリーダーならどうしますか?
「旧式を使うのは反対。しかし壊れやすい機器なので顧客に持たせると余計に不安にさせてしまうので、リーダーやガイドが持つだけで十分。」
「顧客にも持ってもらうことで、守られているという安心が得られる。」

Q2.あなたがリーダーなら、頂上アタックの前に下山のために引き返す時間を顧客に伝えますか?
「引き返す時間は生死に関わり、一番重要なのであらかじめ決めて登山隊の中で共有するべき。」
「時間を決めてしまうと、その時間までになんとか登頂したいという思いが出て無理をしてしまう。戻る時間は事前に伝えず、その時の状況を判断してリーダーが引き返す指示を出せば良い。」
「時間を決めておけば、トラブルが起きる無駄な時間を避けられる。自分の中でしっかりとコントロールできればいいが、コミュニケーションがうまくとれず、信頼関係を築けていない状況下でリーダーの指示を素直に受け入れるのは難しいと思う。」

次に、「この遭難事故は防げたのか、防げなかったのか」という議題で、グループで二つの立場に分かれてディスカッションをしました。
A.防ぐことができた
「体調を崩した隊員が多かったので、体調を自己管理できていれば遭難せずに済んだ。」
「高山病にかかったことのある人を連れて行かなければよかった。」
「準備段階のトレーニングをしている時点で、万全の態勢に整えておけばよかった。」
B.防げなかった
(今回の計画に欠陥があったわけではなく、どんな計画だったとしても結果は同じだった。)
「100%という保証はない。天候や体調など、予測できずどうしようもないことがある。」
「どんなに綿密に練られた計画でも、死に直面している時に冷静に判断ができるとは思えない。」

善意ある有能な独裁者

今回のケースに登場するリーダーの一人は「山に出たら私の言葉が絶対的な法律となり、異論は一切認めません。」と顧客に伝えました。登山経験のない顧客を安全に登頂から下山まで案内するためには、この方法が最善と考えたからです。このリーダーのように、「私の指示に従って動くのが間違いないから、言うことを聞くように」という善意ある有能な独裁者タイプのリーダもいれば、「皆の意見を聞いて決めましょう」という民主的なタイプのリーダーも世の中にはいます。リーダーがどのような人物なのかで集団の行動プロセスは変わると椿田先生は説明しました。
ビジネスの現場でも、集団や組織を率いるリーダーとして、似たような場面に遭遇することがあるかもしれません。自分が社運をかけたプロジェクトのリーダーなら、新事業を展開する会社の社長だったら、予期せぬトラブルに巻き込まれた時、瞬時に最善の決断を下すことができるのか。自分ならどんなリーダーになるか、学生一人ひとりがアクティブラーニングを通じて考える良い機会となりました。