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アクティブラーニングで学ぶ地方自治

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

アクティブラーニング, 講義

今回の北村貴先生による「政治学」講義のテーマは地方自治です。その中でも大阪にクローズアップし、2008年〜2015年の橋下徹(敬称略)による政治についてのケースを読み解き、アクティブラーニングで学びます。今回のケースの舞台は、大阪府。大阪市と堺市を政令指定都市とする大都市です。大阪が抱えている問題の一つに、二重行政があります。このケースにおける二重行政とは、大阪府と政令指定都市の所轄業務が重複することを指します。この二重行政による行政費用の無駄の解消を主張し「大阪都構想」提案したのが橋下徹です。大阪都構想とは、大阪府と政令指定都市を統合したものを特別区に分け、その上に大阪都を置くという構想です。


大阪維新の会設立


2008年の大阪府知事選に立候補した橋下徹。当時、弁護士でありタレントでもあった橋下は知名度が高く、自民党と公明党からの支援もあり、見事圧勝。就任の挨拶で橋下は、大阪府職員に対して「皆様方は破産会社の従業員だと認識してください」と発言。無駄の多い大阪の行政改革に意欲的でした。しかし、実際の政策を運営していく上では、大阪府議会(自民党・公明党)と協力していく必要があります。ところが、橋下が大阪府庁舎の移転を主張するも、自民党と公明党に反対されてしまいます。政権基盤から反対を受けた橋下は、大阪都構想を実現すべく2010年に政党「大阪維新の会」を設立します。しかし自民党・公明党という政権基盤を捨てるということは、政治家としてはかなりリスキーな行動です。
さて、あなたが橋下の立場ならば、同じように政党を新設するか、それとも大阪府議会との関係修復のため協調しながら政策を遂行するか。学生間でディスカッションが始まります。
政党設立派からは、「リスキーだが勝てば強く、実力を発揮しやすい」「メディア戦略として注目を浴びる」との意見が挙がりました。反対に、関係修復派からは「政治家として経験不足のため、権力と経験豊富の自民党や公明党と協調すべき」「与党は強力なバックアップとなり政策をスムーズに遂行するために強調が必要」との意見が挙がり、活発なアクティブラーニングが行われました。


大阪維新の会の快進撃

2011年に大阪維新の会が「大阪春の陣」と呼称した統一地方選挙では、目標とする三つの議会(大阪府議会、大阪市議会、堺市議)での過半数の議席獲得には及びませんでしたが、それぞれの議会で第一党となりました。その後、維新の会は大阪府と大阪市の再編を主張しましたが、当時の大阪市長である平松邦夫の猛反対を受け、大阪府知事の橋下と対立関係に。そして同年に行われた大阪ダブル選挙では、大阪市長選で橋下と平松の一騎打ちの末、橋下が当選。大阪府知事選では大阪維新の会の松井一郎が当選となり、都構想実現に向けますます勢いがつきます。

維新の痛手

大阪都構想は、大阪府を都に変え、市を解体し、特別区を設置することを目的としています。しかし2013年に行われた堺市での市長選にて、大阪維新の会は敗北。堺市は事実上、大阪都構想から外れてしまいます。さらに、大阪市の行政区の再編について協議するための「特別区設置協議会」において、他の政党の協力が必要にも関わらず、維新の会以外はすべて反対。協議会内の過半数の議席数を獲得できていない維新の会は、特別区割りの議決に失敗しました。この結果を受け、橋下は大阪市長を辞職し、再度市長選に立候補しました(出直し選挙)。
橋下が出直し選挙という戦略を選択するメリット・デメリットについてディスカッションが繰り広げられます。メリットについては「都構想に賛成かどうかを市民に問うことができる」「市民の意思を尊重していることがわかるため、議会内での発言力を大きくできる」「インパクトを市民にアピール」との意見が挙がりましたが、デメリットもあります。「任期を途中放棄して再選挙をするのは身勝手だと思われる」「一人相撲だと市民に呆れられ、相手にされなくなる恐れがある」
様々な発言がありましたが、現実の政治では、87.5%の得票率で橋下が圧勝。しかしその中身は痛ましいものでした。投票率23.59%、無効票が投票総数の13.53%と、橋下の支持者は有権者の20%だといえます。

しかし強い橋下維新

維新の会は橋下市長の再選を背景に強引に特別区設置協議会の過半数のメンバーを選びました。しかし大阪都構想には最終的に住民投票で承認が必要です。最後の関門として214万人の有権者による住民投票が行われました。結果、住民の過半数以上の賛成は得られず、大阪都構想は失敗に終わります。橋下は市長の任期満了をもって引退することになりましたが、2015年に再び行われた大阪ダブル選挙では維新の会が勝利しました。
教室では、あなたが橋下の立場ならば政治家を引退するか、それとも再度大阪都構想の実現に向けて邁進するかについて学生同士ディスカッションが繰り広げられます。アクティブラーニングでは、意思決定者の立場になって思考し、意見を明確に相手に伝える力を鍛えることができます。