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アクティブラーニングで学ぶ消費行動

#アクティブラーニング #アクティブラーニング事例紹介

アクティブラーニング, 講義

矢部謙太郎先生の社会学では、アクティブラーニングで消費行動について考えます。今回のケースの主人公は黒川氏(30歳)。黒川氏は1日2箱のタバコを吸うヘビースモーカーです。喫煙で損なわれる健康を補うため、毎日5種類のサプリメントを摂取しています。まず喫煙で減少するという「ビタミンC」と血流をよくする「DHA」、「イチョウ葉エキス」の3種類。また、黒川氏は仕事の付き合い上お酒の席も多く、肝機能低下を心配しているため「ウコン」と「オルニチン」の2種類を摂取し、機能低下を緩和しようとしています。


健康の演出


黒川氏はもちろん、何度か禁煙を試みてみましたが、禁煙の苦労に耐え切れず断念してしいます。しかし、毎朝サプリメントを飲む瞬間に健康を実感しています。ここで学生に、黒川氏の消費行動を基に共感できる点、できない点についてディスカッションをします。
共感できる点については、「喫煙、禁酒の害を相殺できると思わせ、心のバランスを保つ」「生活習慣の改善が難しいので、お手軽なサプリを飲む」という声が挙がり、共感できない点については、「独断で判断せず、禁煙外来などに行き医者に相談すべき」「喫煙、飲酒の害をサプリメント摂取で相殺できると思い込んでる」「サプリメントはあくまで補助食品なのに大きな信頼を寄せている」という意見が挙がりました。
サプリ摂取と禁煙禁酒による健康の違いは、心の健康(自己満足)か、抜本的な体の健康だと思われます。しかし、サプリメントは手軽に継続できますが、禁煙禁酒は我慢がつきもので自力で取り組まなければなりません。そのため黒川氏は禁煙・禁酒は諦め、サプリを摂取することで健康な自分という擬似現実を作り上げます。


黒川氏の擬似現実

さらに、黒川氏は健康のためテレビやインターネットで情報収集をするようになります。そこから喫煙によって作り出される活性酸素を除去するに良いとされる「αリポ酸」と「コエンザイムQ10」という新たなサプリメント商品を買おうかと検討します。黒川氏の消費行動は、依存や自己満足、病気への恐怖心に囚われた心理状況といえます。
このケースでは、サプリメントという商品に「記号価値」がはたらいています。記号価値とは、商品に内在する価値のことで、消費者に「擬似現実(まぼろし)」を見せる、また消費者に「現実」を否認させる(隠す)はたらきがあります。そもそも消費とは、安楽で快適な日常を過ごすための受動的な行動です。そこに記号価値が働き、サプリメントの購入・摂取によって「健康な私」というまぼろしを見せ、禁煙という苦労や努力によって健康を得られる現実を否認させます。
このように、記号価値を利用した消費行動について、グループに分かれディスカッションしながら考えます。アクティブラーニングでは、ケース(事例)を基に主人公の立場で思考と意思決定をし、学んだ内容を講義内で応用しながら知識を定着させていきます。