アクティブラーニングで学ぶ心の行動や意識の尺度
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- 授業レポート
椿田 貴史先生による心理学の授業では、ビジネスや教育、医療の現場において最も“使える”心理学を、アクティブラーニングで学びます。 この授業では、自分の悩みや改善したい習慣などに注目し、「自己介入調査」...
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Case Method
【曲当て実験のルール】
1.二人一組のペアで行います。
2.一人は演奏者、もう一人は解答者になります。
3.演奏者は、お互いが知っている曲を指やペンで机を叩いた音のみで演奏します。
4.解答者の人は何の曲かを答えます。
この実験をする前に、指で演奏する人は、相手が全部で何曲当てられるかを予想しておきます。その予想した数から、実際に相手が正解した数を引きます。さて、皆さんが演奏者だとしたら、解答者の人は何曲当てられると思いますか?
実験の結果、一番多かったのが、引き算をした数がプラスマイナス1以内の学生、次に予想よりも実際の正解数が多かった学生、一番少なかったのが予想の方が実際の正解数よりも多かった学生でした。この実験の結果から、何が見えてくるか学生一人ひとり考察します。
「予想した数の方が実際よりも多いのは、相手なら答えられると高く評価しているからではないのか。」
「相手や自分に対する先入観(できる・できない)があるから、予想と実際の数に差が生じるのではないか。」
「相手についてよく知っている場合は、差が生じにくいのかもしれない。」
学生の意見にもあったように、相手のことをよく知っていれば認知バイアスは小さくなり、その逆は先入観が強くなり認知バイアスは大きくなると予想されます。都心型コースの学生は、毎日アクティブラーニングをする中で学生同士関わる時間が多く、お互いのことをよく知っています。そのため、引き算をした数がプラスマイナス1以内の学生が多かったのかもしれません。
今度は、実験結果とケースを結びつけて考えてみます。
ケースの主人公である新米経営者は、「私の判断は間違っていないから、社員は言うことさえ聞いていればいい」と考えています。反論する社員がいればクビにし、「代わりなんていくらでもいる」と辞めていく社員がいても気にも留めません。気鋭の若手社員が辞めると言った時、この社員に辞められたら会社の大きな損失になると周囲が慌てて引き止めました。しかし、新米経営者はこの若手社員に対して「仕事ができるようには到底思えない。辞めたい人は辞めればいい」と考えるだけでした。学生は、実験から新米経営者について見えてきたことを発言しました。
「気鋭の若手社員を過小評価しているが、営業の実績や数字を見ればどれだけ活躍しているかは分かるので知る努力が必要だった。」
「新事業がうまくいくと過信していたが、会議で周囲の意見を聞く姿勢があれば結果は変わっていた。」
学生はアクティブラーニングを通じて、偏った考えで一側面でのみ物事を考えることの危うさについて理解を深めた様子でした。