困っている人に会計と英語のスキルを生かしたい – 国連世界食糧計画に勤務する卒業生の新谷雅之さんにお話を伺いしました。(後編)
卒業生の新谷雅之さんは、2020年にノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画で、ファイナンス・オフィサーとして活躍されています。今回は、名商大での学生生活や将来の展望について、栗本学長と語り合っていただきました。前編はこちらから。
学生時代、英語はどのように学ばれましたか?
新谷雅之氏(以下、新谷):もちろん名商大の授業でも勉強しましたし、名商大の海外プログラムで香港中文大学に9ヶ月間交換留学し、その後イギリスのサルフォード大学に3ヶ月間、語学研修へ行きました。久しぶりに名商大にきて留学生がたくさんいることに驚きました。
栗本博行学長(以下、学長):そうですね、今や留学生はコロナの前よりも多くなりました。英語のみで授業が行われるGlobal BBAは、今年で5年目ですが100人以上、交換留学生もあわせると270人は在籍しています。この地域で世界64カ国から来ているのは、私立大学では名商大ぐらいです。
学長:また、Language Exchange と呼ばれる日本人学生と留学生が互いの言語を教えあうプロジェクトも人気で、参加者はとても楽しそうです。海外に行かずとも留学経験が積めるのも魅力だと思います。これだけ多様性の高い環境は全国的にも少ないと思いますよ。
新谷:2003年に卒業したのですが、当時と比べて、英語を話す機会や留学生と交流する機会など、いろんな機会が増えていいなと思います。
学長:今では国際交流だけでなく、日進キャンパスの中に「国際高等学校」が完成し、系列の経営大学院もアジアを代表する教育機関と肩を並べる環境にあります。
大学を卒業されて、名商大の強みはどんな点だとお考えですか?
新谷:ケースメソッドで身につける、自分の頭で考える力やリーダーシップ力ではないでしょうか。先ほど、国際高等学校に行って来ましたが、生徒さんがオープンキャンパスをしていて、高校生なのに英語のレベルが高くて、すごいですね。みなさんのリーダーシップやプレゼンスキルがすごいと思いました。
学長:名商大はミッションとして「フロンティアスピリット」を掲げて「リーダー教育」を軸にしています。「Education for Life and Leadership」といって、人生を豊かにしリーダーシップを発揮できる人材を育成することを目標においています。
学長:知識や資格のような単なるスキルではなく、決断力、判断力、表現力といった力を高めるためには、座学では限界があります。名商大では、ケースを読みながら「この状況、自分ならどう決断するか?」といった意思決定を追体験する教育に取り組んでいます。
新谷:ニュージーランドの公認会計士試験には、6ヶ月間のプログラムがあります。そこでは、 オーストラリアにあるマイヤーズというデパートのケースを用いて、今後どう成長をさせていくか、もし財務責任者(CFO)の立場としたらどのように株主に説明するのかという課題が出されました。
新谷:マイヤーズは以前、クリスマスの時期にオンラインのサーバーがダウンして、オンラインの商品が売れなかったということがあったのですが、そういったことも加味して、提言していくという内容です。自分がCFOだったらと自分の頭で考える試験でした。
学長:実に興味深いですね、そういった追体験が、想像力を掻き立て、単純に知識だけでなく、一体どのようなジレンマや悩みがあるのだろうか?と考えるんですよね。
新谷:僕が学生の時は座学が中心でしたので、ケースメソッドで学べる今の学生がすごく羨ましいです。
将来の展望を教えてください。
新谷:国連で働き続けるというのも可能性としてはあります。会計士になったときに、お金を持っている人に会計のサービスを提供するよりは、困っている人に会計のサービスを提供したいと思いました。そういった意味で、国連の仕事は困っている人、命の危険が迫っている人に対してサービスを提供するため、やりがいを感じています。
新谷:あまりにも各地を転々としているので、日本に帰っていきたいという気持ちもあります。タイにはあと3年ほどいる予定なので、ゆっくり考えていきたいと思います。
最後に名商大の在学生にメッセージをお願いします。
新谷:英語はあくまで言語で、ツールだと思うので。英語が話せないからといって、留学生との交流や海外留学を諦めないでほしいと思います。いろんなことに怖気付かずに挑戦してほしいです。
新谷雅之(しんたにまさゆき)/2003年外国語学部卒。石川県野々市明倫高校出身。在学中は香港中文大学に交換留学。卒業後、竹中工務店に勤務。退職後、Victoria University of Wellington, New Zealandにて会計学の修士号取得、オーストラリアとニュージーランドの公認会計士試験(Chartered Accountant)に合格。その後、国連世界食糧計画(WFP )に勤務、ナイロビ、ローマを経て現在はバンコク地域事務所にてFinance Officerとして勤務。
栗本博行(くりもとひろゆき)学長/大阪大学にて博士(経済学)を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし消費者行動分析に関する論文を多数執筆。近年はMBA(経営大学院)の教育課程開発を中心に担当しながら、事業継承および長寿企業に関する研究に取り組む。事業承継学会常務理事およびAMBAアジア太平洋諮問委員。