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経験とロジカルシンキングが、人から認められる自分を作るー  マーケター 長瀬次英氏 インタビュー【後編】

長瀬次英氏 LDH JAPAN CDO × 山岡隆志教授 名古屋商科大学商学部


今回は山岡隆志教授より、LDH JAPAN CDO 長瀬次英氏へのインタビューを、本学ビジネススクール(大学院)東京キャンパスにて行いました。
「これまで手掛けた中で最もエキサイトだったプロジェクトは何か」「顧客ニーズの捕まえ方」といった実務経験談はもちろんのこと、「マーケターとして大切なものは何か」「結局、マーケターとはどういう職業なのか」など、マーケターのトップランナー同士だからこその白熱した対談となっています。



山岡隆志教授(以下、山岡と表記):長瀬さんはこれまでマーケターとして素晴らしい実績を積まれてきていらっしゃいますが、キャリアの作り方とか、キャリアアップをするためにはどんな事をしていけば良いとお考えでしょうか。


長瀬次英氏(以下、長瀬と表記):マーケターであれば、企画・製造から販売・消費に至るまで、一通りのことが理解できていた方が良いと思います。従って、やや逆説的かもしれませんが、一つの会社で全てのことを経験することはできないという点が、僕が複数社でキャリアを積んできた源泉かも知れません。例えば、食べることに興味があるなら、野菜の生産方法とか、飲食店がどういうビジネスで成り立っているのか、スーパーマーケットはどういうビジネスモデルを持っているのか等、一通りのことは知っておいた方が良いと思います。それは、ある程度調べて勉強すればわかるけれども、実際にその現場の人間として働いてみるのでは全然違うのではないでしょうか。


山岡:自分の足で踏み入れた経験の有無が、マーケターとしての差につながると?


長瀬:ええ、だいぶ大きな差が生じると思いますね。そういう意味で、僕は意図的にマーケターとしての自分のキャリアを作ってきています。マーケターであれば、広告の意味、事業主の事も理解していなければ務まらない。ましてや、サプライヤーや代理店さんと上手くパートナーシップを結びながらリーダーシップを発揮しなくちゃならないというのは、経験からでしかわからないはずだと思います。


山岡:色々な立場に身を置いたからこそ見える境地があるという事ですね。


長瀬:そうです。ビジネスパートナーの事を身を持って理解していれば、直球で相手がしたいもの、何を提供してくれるのか等をクリアーにして話を進めていけるので、ビジネスパートナーの仕事の中身や“腹の内”を疑う事なくスムーズにビジネスを進めていけるわけです。そのためにも、色々な仕事を経験して掴んでおくというのは重要だと思います。


山岡:なるほど。キャリアアップの面においても、顧客中心や人間中心の視点で考えて、顧客が経験するものもマーケター自身のキャリアとして身につけておく。それがマーケターとしての実現性を高めて行くわけですね。


長瀬:はい。やっぱり、相手はシビアなところまで見てきますからね。このマーケターは、どういう優先順位で物事を見て考えているのかとか。


山岡:逆に、こちらも相手のことをきちんと見ておかないと、プロジェクトの途中で、担当者が転勤で変わってしまい、進行が止まってしまうとか、よくありますよね。でも、やっぱりそこを予想して進めておかなかったとしたら、それはこちらの落ち度でもあります。


長瀬:そうなのです。相手の転勤周期もわかっていたら計画の立て方も変わってくるわけです。でも、それは人間関係を深めておけばわかることです。つまり、人間が大事だってことを理解できてアプローチできているか否かだけの話なのですよ。マーケターって、インサイトを探る力うんぬんではなくて、本当に自分が関わっている人たちのことをちゃんと把握できているかに尽きるのかもしれません。


山岡:外側も内側もどっちもよく知っている人、マーケターはそういう立ち位置に立っている人のことをいうのかもしれません。


長瀬:自分の立ち位置を知ることは、本当に重要だと思いますね。


山岡:それでは最後の質問となりますが、これは大学(学部)のHPに掲載予定なので、大学時代の過ごし方についてアドバイスをくださいますか。


長瀬:いくつかありますが、経験値としてお伝えしたいのは、まずは自分がどのマーケットで戦っていくのかは早いうちに決めた方が良いと思いますね。


山岡:例えば、日本か、アメリカか、中国かとかでしょうか?


長瀬:そうです。もし、日本のマーケットであるならば、好む好まざるに関係なく、日本の大企業と嫌でも渡り合わなくちゃいけないので、だからこそ日本の企業に入って学ぶ経験が重要になってくると思います。


山岡:長瀬さんご自身で具体的に伺えるエピソードとかありますか?


長瀬:僕がfacebook時代の例でお話しすると、僕は海外で育っていることもあって、ビジネスパートナー始め大企業のお偉方さんたちには、外資系のわけわからない、英語しか喋れない人間だと思われる可能性すらあるわけです。でも、僕のKDDIのキャリアがそのイメージを一変させてくれる。facebookにとってのビジネスパートナーたちにとっては、KDDIという通信会社での経験があるなら「俺たちの業界のやり方を知っている人間だ」という証になるので、一気に互いの距離が縮まるのですよ。


山岡:それ、特に日本のマーケットでは大事ですよね。


長瀬:ええ。たとえスタートアップをやろうとしたとしても、お金をもらおうとしたら日本の大企業のお偉方さんたちからの信頼を得なければならないわけですよ。信頼を得る経験値を持っているのは、本当に大事だと思います。僕がfacebookに雇われた理由はまさに、その経験値を持っていたからだと思います。僕はそれまでのキャリアで、ずっとリレーションをやってきたので、広告代理店さん、電気通信会社さんたちと一緒にビジネスをした経験があるわけです。


山岡:なるほど。キャリアをロングスパンで考えたら、誰と一緒に仕事をやってきたかはとても重要ですね。


長瀬:そうなのです。認められる自分をどう作るかというのは、ビジネス上とても重要なポイントだと思います。そのために何が必要なのかについては、プロや先輩の話はたくさん聞いた方が良いと思いますね。


山岡:やっぱりキャリアを作るにしても、会社を選ぶにしても、大学時代からネットワークをたくさん作っておくことは大事になってきますか?


長瀬:ええ。だからこそ、学校にいるだけじゃなくて、色々外に出て様々な人たちと出会うべきだと思いますね。「どこにいけば良いですか?」なんて質問受けたりしますが、ネットとかで検索すれば出てくるもので始めれば十分だと思いますよ。いつもと違うカラオケ店に行けば、いつもと違う人と出会えますから。お金がないなら、社会人になっている先輩とか、リタイヤした親戚と仲良くしてあちこち連れて行ってもらえば、どんどん色々と繋がってくるわけで、そうすると、繋がりの中でまた新しいつながりが生まれてくる。その積み重ねでネットワークの作り方がわかってくるし、自分がネットワークの中につなぎ込んでいくことが重要だと痛感すると思いますよ。


山岡:たまにいますよね、優秀というか、それができている学生が。僕らの頃は本当に優秀な人は有名な企業に行くので、起業とかしなかったですが、今は若くして起業して、成功している人もいますよね。しかも、結構社会性があるものを作ったりしていますし。そういう意味では、僕たちの時代に比べて、優秀な人はより優秀に、そうでない人はよりそうでない人に、なんか二極化してきているなって思います。


長瀬:そうですよね。その結果の差ってやはり人脈の差だと思います。


山岡:そういえば、先ほど授業中にして下さった講演の中で、長瀬さんは就職氷河期にも関わらず30社近くから内定を取られたと仰っていましたが、他の学生と比べてご自身のどんなところが長けていたからだと思いますか。やっぱり、ネットワークの作り方を知っていたからですか?


長瀬:それもありますが、同時に、ロジカルな部分があるからだと思いますね。あとは、物事をはっきり言うところでしょうか。


山岡:なるほど。ロジカルなところはやっぱり育った頃に過ごされたアメリカで培われたのでしょうか。


長瀬:多分そうだと思いますね。


山岡:僕も本格的な論理的思考を初めて勉強したのは留学準備のGMATを勉強した時です。日本の教育で論理的思考を勉強する機会はほとんどなかったですよね。


長瀬:英語って文法的にもロジカルな言語なので、そう言うカルチャーの中で過ごした経験が活かされているのだと思いますね。ロジカルだと、説明するのがうまいですし、話を的確化させることができるので、説得力が格段に増しますよね。だから、特に外資系から評価され内定をたくさん頂けたのだと思っています。


山岡:そう言う意味では日本語ってロジカルじゃない部分も多分に含まれているので、英語を話す環境に身を置くことは重要ですね。


長瀬:あとね、僕は数学も得意なのです。それも多分ロジカルだからだと思います。


山岡:僕も数学得意なので、仰っている意味がよくわかります。


長瀬:ロジカルに言われると単純な数字でもきちんと記憶できますが、人の顔を覚えるとか何もロジカルじゃないものの場合、記憶に残りづらいですよ。でも、面白いなあと思うのが、人間が好きってロジカルじゃないですよね。そこは大事なポイントだと思います。


山岡:確かにそうですね。右脳と左脳は分けて考えないといけませんね。


長瀬:そうなのです。だから、「人間が好き」をロジカルにするのではなく、「人間が好き」はロジカルじゃないから、「人に好みを聞いてみなきゃわからないでしょと」言うロジックで動くべきなのだと思います。


山岡:そういうのも含めて、ロジカルシンキングはとても重要ですね。今日は貴重なお話を伺わせて頂きありがとうございました。


長瀬次英


LDH JAPAN 執行役員・CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)。
インスタグラム日本事業責任者、日本ロレアルのCDOを経て、現在は株式会社LDH JAPANにてチーフ・デジタル・オフィサー兼執行役員を担い、組織全体と事業全体 (音楽、ライブ/ステージ、映画/動画、アパレル/ファッション、飲食、GYM/スポーツ運営、教育/学校など) LDHが抱えるビジネス全体のデジタルアクセレレーションを推進している。史上初2年連続アド・テック東京(2017&18)で#1スピーカーを受賞、2018年1月に「Japan CDO of The Year 2017」を受賞。Forbes・Japan(2017年12月号)にて「カリスマCxO」の一人として特集される。