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“マーケターとしてのキャリアと素養”

マーケター鈴木健氏インタビュー【前編】


今回は、山岡隆志教授よりニューバランス ジャパン DTC&マーケティング部 ディレクターへのインタビューを行いました。



山岡隆志教授(以下、山岡と表記):簡単に自己紹介というかプロフィールの紹介をお願いします。

鈴木健氏(以下、鈴木と表記):私は1991年に広告代理店に入り、営業をやっていました。それから5年くらい国内の代理店で国内のクライアントを担当し、最後のほうに外資系メーカーのトイザらスを担当しました。その時の上司が機会を与えてくれる人で、本社があるニュージャージーへプレゼンに行かせてくれたりする中で、外資系の仕事に興味を持ち、外資系の広告会社であるDDBに転職しました。

その頃も営業をやっていましたが、日本の代理店とは違って、全員がプランニングツールを学ばなければいけなかったので、研修でマーケティングの考え方を学び、その時にマーケティングの面白さに気づきました。その頃は、アカウントプランニングという広告では戦略プランニングと言われているものが流行っていて、マーケティングプランをきちんと学びたいと思い、営業から職種を変えてアカウントプランナーになろうと思いました。外資系で営業から急にプランナーになることは簡単ではなかったのですが、I&Sの戦略プランニングの責任者に面接の時に気に入ってもらい、I&S BBDOでマーケティングプランナーを初めて経験しました。

10年ぐらい経った時に、I&Sを辞めた上司からの電話がきっかけで、ナイキのゴルフのマーケティングの仕事に応募することになり、そこからその事業会社に移りました。ナイキで5年ぐらいゴルフの仕事をした後に、違う部分の事業にも興味を持ち、社内でウィメンズトレーニンングやフィットネスのブランドマネージャーを探していたので、そこに応募しました。最後の2年くらいは女性のマーケットを開拓し、リーマンショックが起こったことをきっかけに退職しました。その後は、ナイキ時代に知り合ったニューバランスの方で、現在の社長から声を掛けていただき、ニューバランスの宣伝の担当になりました。

当時はランニングに力を入れていました。間 寛平さんを起用したアースマラソンのプロジェクトで、スニーカーやウォーキングシューズのイメージが強いブランドをスポーツ寄りにしていこうというグローバルの方針もあり、野球やテニス、サッカーなど、新しい事業領域が増えていき、2013年ぐらいから、オーセンティックな靴が逆に評価される時代になり、当時に比べて今の売り上げは倍くらいになりました。2年ぐらい前から、マーケティングのセクションだけではなくて、直接消費者に売るという直営のチャネルを強化するようになり、店舗も今までは東京と大阪に1店舗ずつ小さな店しかなかったのですが、フラッグシップ店舗を原宿につくり、積極的に店舗を拡大することになりました。ここはブランドに一番ロイヤルティの高いお客様がくるチャネルですから、ブランド的にもマーケティング的にも重要です。今は自分も、その消費者に直接売るチャネルという意味のDirect to Consumer: DTCに責任範囲を広げて、DTCとマーケティングの部署を統括しています。

山岡:広いですね。そういうコミュニケーション系もやりつつ、直営店もEコマースもみられているということですね。今までのマーケティングの仕事で、印象深かった仕事はどんなものですか?


鈴木:そうですね。私は広告会社から出発しているので、マーケティングの部分と言っても最後の部分というか、本当に広告を作るとかコミュニケーションプランを作るというところで、実際の製品などを扱っているのは違う部署だったので、どちらかというと付加価値を与える仕事が中心です。白紙状態からという経験は、BBDOにいた時にアメリカの会社の小型犬用のペットフードのブランドのプランニング担当をしていた時に、「イノベーションを起こせ!」みたいなプロジェクトがあり、ゼロから商品を作り、最終的には商品化されませんでしたけど、そこのプロセスは非常に面白かったですね。


当時小型犬のペットフードは、基本ウェットフードで、大型犬はドライフードを食べていました。健康ブームが犬にも押し寄せていて、美味しくはないけど健康に良いというドライフードが攻めてきていて、小型犬のウェットフードはとにかく美味しいから食べるけど、健康に悪いというネガティブなものであったので、それをどうにかして払拭しようというプロジェクトでした。
今まで広告しか作っていなかったところで、お客様が実際に良いというモノを発見するというプロセスが、非常に面白かったですね。今までみたいに、与えられたものでコミュニケーションプランを考えるのではなくて、お客様が感じている問題を具体的に解決する部分を考えることは、非常に面白い作業でした。

山岡:マーケターのやり甲斐というのは、顧客のニーズを掴んで、問題解決をして、今までにないものを作りだす、みたいところが一番の醍醐味ですかね。
何かマーケターに求められる素養とういうか、こういうものがあった方が良いよっていうものはどんなところがありますか?

鈴木:私は3つぐらいあると思っていて、一つ目は知的好奇心。面白いものを発見したり、物事をどうしてこうなっているのだろうと考えたりすること。二つ目はエモーショナルなものに関することで、人の気持ちとか相手がどう感じているのか、共感する能力。特に女性はそういうものが高く、マーケティングの人たちはやはり女の人の方が多いのかなと思います。三つ目はレジリエンスというかへこたれない忍耐力が重要ですね。結構マーケティングの仕事は急にキャンセルになったりとか仕事がうまくいかなかったりすることがあるので。

山岡:これ重要ですね。マーケター以外でも重要ですよね。

鈴木:立ち直りが早いというのは大事だと思います。あんまり過去にこだわりすぎないということも含めて。でも自分が好きなことをやっているからこそ、引きずっちゃうことはよくありますよね。

山岡:ありますよね、ある程度まできたら諦めの境地というか、こだわりもだいぶんなくなったりしますよね。


鈴木健氏のプロフィール


株式会社ニューバランス ジャパン DTC&マーケティング部 ディレクター
1991年広告代理店の営業としてスタート、その後消費財メーカーのマーケティング企画および調査を担当。02年ナイキジャパンでゴルフの広告やウィメンズトレーニングのブランドマネージャーを経験。09年ニューバランスジャパンに入社し、ニューバランスブランドのPRおよび広告宣伝、販促活動全般を手掛ける。ブランドマネジメントおよび広告・プロモーションが専門領域。2017年より直営店およびEC事業を統括。

マーケター鈴木健氏のインタビュー記事は【中編】へと続きます