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マーケターが経営者の場合ー マーケター齋藤理佐子氏インタビュー 【中編】

山岡先生(以下、山岡と表記):それは昔からある経営理念ですか?

齋藤様(以下、齋藤と表記):そうです。

山岡:近江社を助けた時代から?

齋藤:そうです。企業である以上稼ぐ力が無ければ永続しないのですが、売上・利益よりもまず人、社員、お客様がある。最近、ESGとかSDGsといった考え方が広く浸透し始めていますが、それより遥か前から公益資本主義という概念を重んじてきました。株主還元は最後であり一要素に過ぎない。まず、社員が生き生きとして働くこと、そうゆう社員があって、良いものができて、お客様に喜ばれるものを作って。これで、世の中がハッピーになる。そういうところにお金を使っていきましょうと言っています。結果として、永きに渡り右肩上がりで成長してきた会社です。

山岡:すごく売上が落ち込んだ時期はあまりなかったですか?

齋藤:2,3年前がそういう時期だったかもしれません、でもブレなかった。

山岡:素晴らしい。

齋藤:なくてはならないものを作っているという自負があるからだと思うんです。

山岡:その経営手腕はすごいですね。普通はブレますよね。

齋藤:普通はブレそうなんですけど、目薬のビジネスモデルに支えられているという部分も大きいと思います。

山岡:一つ安定したのがあって、それがあるから遊べるみたいな?

齋藤:目薬は人々の生活に根付く必需品となっていて、そして利益源泉でもあり、ロートにとっての屋台骨、ビジネスの柱です。

山岡:そのあたりが、バランスがとれているところなんですね。

齋藤:常に新しい事をやってみようという文化。Aをやるぞ、となってAをやり始めて暫くすると、「え、なんでAをやっているんだっけ?Bをやるぞ。」なんていうのは当たり前。世の中もどんどん変わっていく、その潮目を見逃さない、常に考え続けること、アップデートしていくことが求められます。

山岡:朝令暮改みたいなのが好まれる?

齋藤:朝令暮改というと、聞こえは良いですが、思考停止はダメ、一度決めたことでも、他にアイディアはないのか?他の考えは?と思考を続けろということ。それでも正解は無いので、当たるときもあれば外れる時もある。デオコという最近上市した製品が予想していない観点で、SNS上で大変な話題となり、欠品となるぐらい売れました。会長からは、「こんなの売れんわっ」と言われ、最後の最後まで揉めたまま発売に漕ぎつけましたが、山田会長も社員も予想もしてない程、市場は反応しよく売れました。これは仕掛けたくても仕掛けられるものでもなく、最後はその時の市場が、お客様が決めることなんだと、つくづく思いました。

山岡:こう仕掛けるというものをいれてもバズらないんですけど、バズる可能性を商品に秘めることは必要かと思います。ブランドは突出性が大事なので、話題性を呼ぶような尖った特徴みたいなのがないと商品としてイマイチじゃないですか。特徴を忍ばしておくっていうのはマーケターとして気をつけておかないといけないって思いますね。とんがったものは何かで引っかかる可能性がある。

齋藤:デオコは、中年女性特有の匂いに着目した商品です。女性の心に火をつけたのは、いい年齢になってしまったけど、本当は若くありたいし、そう見られたいという誰もが持つ素朴な気持ちを満たすものであったからだと思います。若い女性が元々持っていた香りが、加齢と共になくなり、その香りをまた呼び戻せるのがデオコという商品。女性はいくつになっても、若くみられたいと思うもので、通常は見た目で演出する商品がほとんどですが、そこをニオイケアするというところがちょっと珍しい商品です。

山岡:実際のバズり方は予想できなかったけど、元々話題を呼びそうな要素をもつ商品だったから、そうなったとも言えます。


山岡:トップが結構カリスマだと社員は従順になりがちなんですけど、そこはないですか?

齋藤:特に女性は忖度なくズバッと言えるところがあるので、意外と切り込んでいきます。ただ、そういう人ばかりではないですし、従順な人も多く、トップからすると自分についてきてくれて可愛いという側面もあるけれど、物足りなくて、それに対する不満も持たれています。

山岡:女性が多かったからよかったですね。男性社員が多いカリスマ経営者がいる会社を何回かみたことがありますが、役員以下全員が従順で、思考停止に陥っていました。

齋藤:成程。

山岡:そういう会社は多いですね、上が優秀すぎるとそうなりがちです。到底及ばないとなると、従うしかないという雰囲気になる。上は意見出せと言うが、結局はトップが決めるので、意見はでてこない。それでも、社長がいる間は会社は伸びるけど、その人がいなくなると衰退していく。

齋藤:そうですね、圧倒的カリスマ経営者がいる会社に共通した頭痛の種ですね。ロートのトップはバランス取れていると思います。

山岡:社長はいちいち言ってはだめと思いながら黙っていられない。社員との差があるので、社員が意見を言っても、最終的には社長の案が採用される。社長の言うことをやることが仕事になるので、社員は思考停止になる。

齋藤:思考停止になって、自分で答えを出さなくなる。材料を持っていき、答えを引き出しにかかってしまう。それでも、「成程そうかもしれませんね」と聞きながらもでも私はこうだとも思いますと一歩踏み込めるかどうか。

齋藤 理佐子氏へのインタビューは【後編】(後日更新予定)へ続きます。

齋藤理佐子氏のプロフィール
ロート製薬株式会社ブランド&コミュニケーション戦略特任部長
富士ゼロックス株式会社 入社 複合機事業の国内・海外マーケティング担当し、富士
フイルム株式会社 移籍 化粧品(アスタリフト等)・サプリメント事業の商品企画、
マーケティングを管掌する。現在は、ロート製薬株式会社 マーケティング責任者。