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ロート製薬の他とは違うところー マーケター齋藤理佐子氏インタビュー【前編】

#山岡隆志 #マーケティング #ロート製薬 #マーケターに聞く

山岡先生(以下、山岡と表記):ロート製薬さんでは、ジョブローテーションでいろんな仕事を経験してもらうみたいなポリシーはあるんですか?

齋藤理佐子 様(以下、齋藤と表記):あります、本人の希望もありますが。

山岡:本人の希望は通る会社ですか?

齋藤:いや、通るとは限らない。寧ろあえて反対のことをやる。ここに留まって更に高みを目指したいと希望を出すと、違う部署に行くということが結構ある。

山岡:私も全然、通らない会社を経験しました。労働集約的な会社ってそうなりがちですよね。

齋藤:ロートの場合は、幹部がちゃんと社員一人一人と向き合うんですよ。その人の思考や特性といったことも含めて向き合って皆で理解した結果、違うところに配置したりする。これで個が育つとゆうか、実は本人が気づいていない強みを会社が引き出してくれます。

山岡:それありますよね。若いうちは自分を評価できる能力もないから、ある意味人事部が決めた方が良い場合が多い。

齋藤:本人はあのように言っているけど、いや私はこちらの部署の方が未来の可能性を引き出すことになる等といって、結局どこで本人が活きるところを決めていく。色んな意味で毛色の変わった会社ではありますけど、それもこれも山田(ロート製薬会長)の経営理念というかポリシーというか。

山岡:僕も若い間に関連企業に出向した経験があるのですが、誰もが知っている企業から誰も知らない企業へ、それで結構ショックでした。結果的に、そこですごく仕事をして、様々な新製品を開発し、留学しようと思えた。

齋藤:わからないものですね。

山岡:花形部署などにいたら、そうは思わなかったと思います。


齋藤:ロートはマーケティングの話ですけど、ものづくりは昔からこだわっていて本当にこれはないと困るという物を作ってきたんです。その結果、選択肢がありすぎるぐらい増えてしまいました。そうなると、消費者はメッセージを受けきれなくなってきて、そこに急速な市場の変化があいまって、最近のマーケティングはすごく難しいなと思います。

山岡:デジタルマーケティングは、どんな感じにやられていますか?

齋藤:色々やっていますけど、大成功というのはまだないですね。

山岡:大成功はまだない感じですか?

齋藤:うまく言って3割ですね。3割バッター。

山岡:WEBサイトはどんな位置づけて活用されていますか?

齋藤:悩みがある消費者への情報発信などを重要視しています。

山岡:ブランドコミュニティーはどういう目的でやられていますか?

齋藤:一人一人と繋がりたいという思いでやり始めていて、結構商品が多いので一つ一つの商品で結びつくというより、ロートとしていろんな商品を一人の人に結びつけたいと考え運用しています。今2万人くらい。

山岡:コミュニティでは、日々どのような活動をされていますか?

齋藤:情報発信や定期的なイベント開催などをしています。あと工場見学とか。

山岡:会員同士もコミュニケーションあるのですか?

齋藤:まだあまりないですね。少数人数でロートにきて頂いて、我々の商品企画に生かす取り組みは行っています。一人のお客様を知ろうとするN1分析を行う目的で、ランチをしながらその人の例えば服装だとかその人の背景みたいなところからどういう生活をされていて、どういうことが価値観として大事かみたいなことを理解する場に使っています。お宅に訪問させて頂く場合もあり、どのような生活をされているのかといったかなり深いリサーチに使っています。

山岡:こうゆうインサイトがあったとか意外な発見などありましたか?

齋藤:この間聞いた時には、あんまり洗練されすぎていない、だけどちょっと清楚な感じの方がロートのクラスターとしては多いことが分かった。百貨店販売をメインとする化粧品会社のお客様とは全然違うんだろうなということが改めて肌で感じることができた。

山岡:でもそっちの方が人数は多いですよね。ペルソナ化するときはどのようにされますか?

齋藤:例えば、大阪の主婦の方のような飛び抜けた個性があるわけではなく、大人しいお上品な東京の人でもない、名古屋在住の56歳とか。

山岡:なるほど、なんとなくわかります。そこが多分ボリュームゾーンなんでしょうね。

齋藤:そうなんですよ。ブランドの癖を洗練化させようとする方向に持っていくのはだめなんですよね。

山岡:それ、難しいですよね。洗練化したくなるよね。

齋藤:そうなんですよ、どうしてもちょっとダサくない?と思ってしまう。ただブランドの癖を変えてしまうと、今のお客様にとっては自分のものじゃなくなったと感じて離れていってしまう。

山岡:顧客志向ではなくなってしまう。

齋藤:なので、ブランドの癖を癖として大事にしなきゃいけない、マーケターの勝手な価値観で変えてしまってはダメ。

山岡:その微妙なところのセグメントを見つけて、ラインナップを並べたのは社長の力量なんでしょうか?

齋藤:そこのカテゴリーが初めてだったからやれたのだと思います。思考そのものは山田だと思います。大企業がやることを、ロートの中小企業が同じようにやって勝てる筈がないと山田は言います。大手であれば、ここは行かないでしょみたいな所を狙うことを確かに大事にしている。私はニッチパイオニア戦略と呼んでいます。

山岡:ニッチパイオニア戦略をやり続けて1,500SKU。

齋藤: 1,500SKU並べると、正直なところ赤字の商品もそれなりにあります。しかし、これを経済性の論理だけで終売することは許されないんですよね。かといって、赤字SKUが9割になったら会社は成り立たないですが、もしその商品が世の中ではロートしか作っていなくて、でも実際に買っていただいているお客様は1,000人しかいなかったとする。しかし1,000人のお客様はその商品が無くなると困る。そういう商品を切ってしまってはだめ。社会性をすごく大事にするところがあります。その商品で稼いでいるから良いではなく、最後の最後では、それでも1,000人の人がどうしてもなかったら困るというものは残そうという判断になります。

齋藤 理佐子氏へのインタビューは【中編】へ続きます。

齋藤理佐子氏のプロフィール
ロート製薬株式会社ブランド&コミュニケーション戦略特任部長
富士ゼロックス株式会社 入社 複合機事業の国内・海外マーケティング担当し、富士フイルム株式会社 移籍 化粧品(アスタリフト等)・サプリメント事業の商品企画、マーケティングを管掌する。現在は、ロート製薬株式会社 マーケティング責任者。