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マーケティングは企業活動そのものー  マーケター 石井龍夫氏 インタビュー【後編】

メリーズ、ロリエ、ファミリー、キッチンハイター、マジックリン、ビオレ、アジエンス。
ここに挙げたものは私たちが毎日の生活のなかで目にする商品ばかりですが、実はこれらのどれもにある一人の人物が、マーケターとして関わっています。
今回は、C Channel 常勤監査役、Adobe エグゼクティブフェロー、株式会社イーライフ エグゼクティブアドバイザーとして活躍されている石井龍夫氏に、花王株式会社でブランドマーケティング業務に従事され、その後、デジタルマーケティング活動を統括された経緯について、商学部の学生より話を伺いました。



マーケターに求められる素養とはどんなものですか?


物事が、なぜそうなるのかということに常に関心を持つことですね。もうひとつは人間に興味を持つということ。ものづくりに興味はあるけれど人間には全く興味が無い、売り上げを作ることは好きだけれど誰が買ってくれているかはどうでもいい、という人はマーケターには向いていません。
人の暮らしを良くしたいと思っていたり、人の暮らしを見ることに興味を持っていて、自分の作った商品やサービスが受け入れられることで嬉しさを感じられる人がマーケターになれると思います。
データに現れたことや既成概念を疑うことを真面目にやるということも、とても大事です。データをある一面からだけでなく色々な側面から見たり、出てきた答えが本当に正しいのかと考えたり、お客様はなぜそんな行動をするのだろうかなど、そんなことを考えることも大切ですね。


大学時代にやっておくべきことはありますか?


マーケターになってみて思うのは、自分一人でできることには限りがあると言うことです。マーケターはコンセプトを決め、進むべき方向を決めますが、決まってから実際に実行してくれるのは販売の人や、フラスコを振りながら製品の配合を考えてくれる研究の人やパッケージデザイナーや広告クリエーターの人たちです。格好良く言えばマーケターは指揮官なので、その指揮に基づいて様々な部門が動いてくれるのです。
ですから、どの部門がどのような機能やスキルを持っているのか、きちんと頭の中に入れておく必要があります。色々なことに興味を持ち、それを知ることが重要です。勉強はもちろん、アルバイトもして、目立つ表ではなく目立たない裏側では何が起きているのかということをきちんと知ることが大事です。
つまり企業ではどのような人がどのような役割をしているかということを知っておいてほしいですね。「あの人のやっているあのこと」と「彼がやっているこのこと」を結びつけると自分のやりたいことを達成できる、これを考える習慣を是非持ってください。
人を説得し、納得させる訓練も必要です。塾の先生などもやってみると面白いのではないかと思います。私は学生時代に、メガネドラッグでアルバイトをしていました。あなたの顔に合ったメガネフレームはこれです、とお客様に似合うメガネを自分で考えて提案して売っていたのですが、毎日人と接するアルバイトを続けたことで、自然とプレゼンテーションスキルも上達しました。学生時代は人と触れ合うことに積極的にチャレンジするといいと思います。


最後に私たち学生にメッセージをお願いします


マーケティング志望という前提でお話ししますね。皆さんには日本国内だけでなく、海外にも自分たちが活躍する場を探してほしいです。私は現役時代、海外出張を多くしていましたが、シリコンバレーでアジア人だと思い声をかけると、大体が韓国人か中国人なんです。日本人と出会うことがあまりありませんでした。日本はそこそこのGDPもあり居心地がいい、日本の中で頑張ってそれなりの地位に就くこともできますが、それが結果としてハングリーに海外へ出かけ、何かをやろうという意識づけに繋がらなくさせていると思います。学生の皆さんにはどんなカテゴリーでもいいので、どんどん自分から視野を広げるために、多言語で活動をする、海外で事業を起こすなど、将来は日本から出てチャレンジするという意欲を持って学生時代を過ごしてほしいですね。自分の学びたいことを見つけたり、進む方向性を決めたり、将来へ繋がる何かをどんどん自分の中に貯めていってください。

もうひとつは日本の学生だけでなく、マーケターも含め全体に言えることですが、他流試合をしない人が多い気がしますね。私は学生時代に全国ゼミ大会に出場しガンガン戦った経験があるのですが、きっとそれが今の自分のプレゼンテーションスキルに繋がってきていると思います。企業の中ではマーケティングをやって行く上で、マーケティングスキルや顧客理解スキルも大事ですが、実はプレゼンテーションスキルがとても重要なんです。周囲に対して自分の考えを伝え、いかに納得してもらい動いてもらえるか。自分の中に一本の筋が通った考え方やものの見方という柱を作り、人と接することによってコミュニケーションスキルとプレゼンテーションスキルを上げることは、将来にどんな道へ進むとしても必ず大きな価値を産みます。


パソコン一台でほとんどのことができる現代、どんどん個に埋没してクローズドするような世の中になってしまっていますが、できるだけ外に向かい、幅広く交友関係を作り自分の考えを拡散していくべきだと思います。自分の中に多様な引き出しを作るという意味でも、企業に勤めるようになった時に、自分にとって価値のある情報を提供してくれるような友人を、学生のうちから作っておくことも重要です。自由に動ける学生時代の時間を、ネットワークを広げるために有効に活用してほしいですね。



石井龍夫


C Channel 常勤監査役、Adobe エグゼクティブフェロー、株式会社イーライフ エグゼクティブ・アドバイザー。元花王株式会社 デジタルマーケティングセンター長。元花王クリエーティブハウス株式会社 代表取締役社長。

1980年花王株式会社(以下、花王)に入社、販売部門を経験した後、本社事業部門でブランドマーケティング業務に14年間従事。事業部門では、メリーズ・ロリエ・ファミリー・キッチンハイター・マジックリン・ビオレ等のブランドマネージャーを歴任後、新規事業プロジェクトの責任者としてアジエンスの新規ブランド開発とコミュニケーション立案を指揮。
その後、2003年から花王のweb活用の戦略立案と企画運営に携り、2012年にはデジタルコミュニケーションセンターを新設、花王のデジタルメディアの推進に貢献。
2014年3月にデジタルマーケティングセンターを設立し、退任までセンター長として花王のデジタルマーケティング活動を統括。
社外では、日本マーケティング協会のマーケティングマイスターやデジタルメディア広告電通賞の審査委員長などの職務も兼任。