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“自分の興味あることを追求するが、将来に繋がる”

マーケター鈴木健氏インタビュー【後編】


今回は、山岡隆志教授よりニューバランス ジャパン DTC&マーケティング部 ディレクターへのインタビューを行いました。



山岡隆志教授(以下、山岡と表記):マーケティングの仕事に就きたいと考えている若い人たちがいるとしたら、どんなふうにキャリアディベロップメントしていくと今の鈴木さんみたいになれますか?

鈴木健氏(以下、鈴木と表記):そうですね。子供の頃の話をすると私は運動が苦手だったので。

山岡:そんなもんですよね。

鈴木:もしタイムマシンがあって、小学校の頃の自分に「スポーツの会社に勤めるんだぞ。」って言ったら絶対ぞっとすると思います。私がもともと広告から入ったのは、コミュニケーションをやりたかったからですけど、ずっとやっていて最終的に思ったのは、大学の学部はあまり関係ないなって思います。

山岡:そうですよね。

鈴木:すべての学問はそうだと思いますけど、自分の興味のあることとかをある程度追及した方が良いと思っています。あまり先のことを考えすぎて、役に立つことをやろうとか考えるよりは、まずは自分が面白いと思うことを追及することが大事かなと思います。そうしていると意外にビジネスのこととかって、その自分が面白いと思ったこととよく似ているんですよね。

山岡:そうですよね。

鈴木:中身は全然違うかもしれないけど、面白いと思ったことには共通点があるので、試しにいろいろやってみるのが一番良いと思いますけどね。

山岡:そうですよね。

鈴木:学問で探すのが難しかったら、まずは旅行に行くのが一番良いと思います。なぜかというと、新しいものに出会うためには、住む場所を変えるのが一番良いからです。同じだと思っていたものが違う場合が沢山あるからです。旅行とか違う場所に行くことは、一番発見がしやすいと思いますね。それで興味があることを見つけるっていうことが良いのではないですかね。

山岡:私も乗り物が嫌いでしたけど、最初就職したのが航空会社だったので。あまり関係ないですよね。学部理系ですし、その時はマーケティングをするなんて思っていなかったですし。鈴木さんと出会ったのは、マーケティングの責任者が集まるカンファレンス、「CMOジャパンサミット」でしたが、そこで話した人たちも、若い時マーケティングやっていた人はほとんどいなかったですよね。

鈴木:そうですよね。

山岡:20年間ずっとマーケティングやってますみたいな人の方がいないですよね。でも皆さん何か一つこだわったものがあって、そこでキャリアが開いています。なので、先のことをそんなに考えないで、いま自分の一番得意なことや好きなことを極めて、そこからキャリアを伸ばしていくやり方が良いと思います。

鈴木:私、昔漫画家になりたかったんですよ。

山岡:そうなんですか。


鈴木:父親に「漫画家になるにはどうすれば良いの?」って聞いたら、「絵を習った方が良い。」って言われて絵を習いに行きました。それ以上は進むことはなかったのですが、漫画が好きだったことはよく覚えているので、自分が好きなものに対する感覚は、好きなものを追求した方が、分かりやすいですよね。


山岡:そうですよね。私も小さい頃から絵をやっていて、油絵とかを高校までやっていました。マーケターになってから、クリエイティブみたいなところもみるじゃないですか、なんとなく芸術的な感覚も分かるから、仕事にもこれが役に立ったなと思っています。データしか読めないマーケターにならなくて良かったみたいな。

鈴木:コネクティングドットですよね。そういうのはね。

山岡:そうですよね。全部何か繋がっていますよね。
最近はデジタルの分野が広がってきていると思いますけど、鈴木さんが思うデジタルマーケティングって何ですか?

鈴木:基本はテクノロジーが世の中の見え方をかえてくれるものだと思っているので。それは必ずしもPCとかスマートフォンベースではなくて、今でいうとセンサー技術であったり、AIみたいなものを含めて、現実そのものをかえているのではなく、現実の見方をかえてくれるツールだと思います。

そうなると今まで見えなかったものが見えてくるわけで、その発見によってまた新しいことが考えられるっていう技術の一つなのかなと思っています。今の関心事は、トライアルさんみたいにカメラをたくさん付けて、オフラインの世界にいかに新しい見方を提供してくれるか興味津々です。中国とかをみているとオフラインとかオンラインとか関係なく扱っているので、単純にデジタルメディアの広告とかだけで語っていると少し狭くなってしまうかなと思います。

山岡:そうですよね。やはりリアルの世界へのデジタル導入が、これからは面白そうですよね、だからトライアルさんがやっているようなものって、内部的にデータが溜まっているので我々が分からないですけど、あれだけデータをとっていたら、すごいことが分かっているのではないのかな?と思っています。研究に使わせてもらえないかなぁと思ったりしています。笑
これまでの流通とかを根底から変えてしまう可能性がありますよね。

鈴木氏:スポーツの分野でいうと、今までデータをとるためには、ラボに入れなくてはいけなかったので。ラボに入れるとなると実地テストじゃないんですよ。

山岡:実際と違いますよね。

鈴木:センサーが小型になり軽量になると、リアルデータでとれるので、データ量が圧倒的に増えます。

山岡:全然違いますよね。

鈴木:実際に開発の時にはそういうことを取り入れていますけど、そのスピードとか精度が高くなったら、革新的なモノづくりでもできると思っています。

山岡:そうですよね、データ量も違うし、本当に買おうと思っていろんなことを考えて身銭を払うのとラボはまた違いますからね。

鈴木:今まではテクノロジー的にそこまで進んでいなかったので。今は3Dプリンターみたいなものがあるので、これまでできなかったレベルの細かさで製品が作れたりします。中国はそのあたりがダイナミックで、スケールも大きいですね。

山岡:これからはデータの時代になっていくので、人口が多いところは得ですね。データがすぐ集まるし、規制も弱いし、ビッグデータも使いやすい。
最後に、今の高校生や大学生に対して、こんなことやっておけば将来役に立つことがあったら聞かせてください。

鈴木:自分の大学の頃を振り返ると未来のこととか、今がいかに貴重かってことが分からないじゃないですか。私はこれからの時代はいつでも働けるし、勉強もできるようになると思うので、趣味でもバイトでも旅行でも何でも良いですけど、時間を贅沢に使って、何かをやれたら良いのではないかなと思います。

最近、採用面接で人事に「この人たちが大人になる時に必要になるスキルとか考え方とかは、我々が判断すべきじゃないんじゃない。」と言っています。世の中全く逆になっていたら、ゲートキーパーになってしまう可能性もあるじゃないですか。過去のことから学ぶこととかもあるかもしれないけど、もうちょっと現実的に自分が見ている世界そのものを自覚していくということが割と大事なんじゃないかと思います。就職面接でこういうことを言った方が点数が良いからじゃなくて、何かおかしいと思うことがあったら、言ったり考えたりした方が良いなと思います。

山岡:学生は興味深いと思うので、就活の面接でどこをみているのか、アドバイスみたいなのがあれば。

鈴木:まずは人間性というか個性ですね、やっぱりみんな学習してくると同じことを言うんですよ。

山岡:まぁまぁそうですよね。

鈴木:面接でスポーツが好きという学生に「日本はこれから高齢化社会になり、子供の人口も減っていくのに、スポーツとか残ると思う?」と聞いたことがありまして、「絶対なくならないと思う。」とか、今の状況しか見ていない様な視野の狭いことを言うんですよね。どんなことに苦労して、それをどうやって乗り越えたのかは聞きたいポイントですね。会社に関わることについては、そこの領域に入るとみんな優等生なことを言いますよね。「モノづくりがしたい。」って初めは言っていて、「他の部署に配属になったらどうするの?」と聞くと、「それで良いです。」という回答が返ってきます。

山岡:そこは柔軟性を示さないといけないと思っているからかなぁ。

鈴木:そうすると、今まで言っていたことが崩れるじゃないですか。あまり考えていないと思ってしまいます。若い子たちには、世の中をどうみているのかを教えてほしいですね。自分たちが全然違う価値観を持っていたら、逆に説得して欲しいですね。

山岡:学生に伝えておきます。本日は貴重な話を聞かせていただき、ありがとうございました。


鈴木健氏のプロフィール


株式会社ニューバランス ジャパン DTC&マーケティング部 ディレクター
1991年広告代理店の営業としてスタート、その後消費財メーカーのマーケティング企画および調査を担当。02年ナイキジャパンでゴルフの広告やウィメンズトレーニングのブランドマネージャーを経験。09年ニューバランスジャパンに入社し、ニューバランスブランドのPRおよび広告宣伝、販促活動全般を手掛ける。ブランドマネジメントおよび広告・プロモーションが専門領域。2017年より直営店およびEC事業を統括。