学部学科

Academic Programs

商学部

BSc in Commerce

  1. TOP
  2. 学部学科
  3. 商学部
  4. お知らせ
  5. 商学部:日中医療機関の管理会計手法《王准教授》

商学部:日中医療機関の管理会計手法《王准教授》

商学部:日中医療機関の管理会計手法《王准教授》

本学商学部の教員、王志先生の論文「日本と中国の医療機関における原価情報の利用に関する一考察」をご紹介します。王先生は中国のお生まれで、一橋大学商学研究科にて商学博士号(会計・金融専攻)を取得されました。一橋大学商学部特任講師を経て本学に赴任され、製造現場における原価管理、品質管理およびその業績評価についての研究や、心理学理論を用いた管理会計の研究をされています。

日本の医療機関でも中国の医療機関でも、医療サービスの質を保ちながら健全な経営を行うという経営の効率化が重要な課題となっており、そのために管理会計手法に関心が寄せられています。本論文は管理会計の中心的な手法である原価計算システムを取り上げ、原価計算システムの提供する原価情報の利用に焦点を当てて日中間の比較研究を行い、それを通して両国の医療機関における管理会計の発展につなげていくことを企図して考察されています。

  


日本と中国の医療機関における原価情報の利用に関する一考察
A Study on the Use of Cost Information in Chinese and Japanese Medical Institution
王 志

1.はじめに

 日本においては,少子高齢化に伴う医療費抑制政策を背景に,病院や医院を中心とする医療機関における経営の効率化が問題視とされている.他方,中国の医療機関のほとんどは,政府からわずかな補助金しかもらっておらず1,自ら病院の存続を図っているため,経営の効率化が重要な課題となる.このように日本と中国の医療機関は多少異なる理由からではあるが,今やどう生き残るかを真剣に考える時代に来ており,効率的な経営が求められている.なお,ここでいう効率的な経営とは,医療サービスの質を保ちながら,健全な経営を行なうという意味である.
 経営の効率を上げるために,日本の医療機関は原価計算をはじめとする管理会計手法に関心を寄せている(荒井,2007,p.228).また,中国においても同じ状況であり,どのような管理会計手法が両国の医療機関で活用されているか,またどのような効果が上げられているかが関
心を集めている.
 管理会計といってもその範囲が広範にわたるため,本稿はとりわけ管理会計の中心的な手法である原価計算システムを取り上げて,原価計算システムの提供する原価情報の利用に焦点を当て日中間の比較研究を行う.原価情報は,意思決定や業績評価のさいに使うもので,効率的な経営を行なうには不可欠な要素である.本研究は,日中間の医療機関における原価計算システムの比較を通して,両国の医療機関における管理会計の発展につなげていくことを企図している.
 本稿は,原価情報を使いある診療科が赤字か黒字かを判断して,赤字であればその診療科を閉鎖ないし縮小するような趣旨では決してない.医療機関の社会性からよりよい医療サービスの提供を重視すると同時に,原価情報を用いて業務プロセスを見える化し,施設の持続的成長に必要な利益の確保を目指すことを目的としている.

続きはNUCB Journal of Economics and Information Science Vol.59 No.1をご覧ください。